巨大さにびっくり 映画館、自宅で得がたい体験で誘う

6階建てビルと同じ高さがあるIMAXシアターのスクリーン(2019年、東京都豊島区のグランドシネマサンシャイン)
6階建てビルと同じ高さがあるIMAXシアターのスクリーン(2019年、東京都豊島区のグランドシネマサンシャイン)

新型コロナウイルス感染症の影響で大作映画の公開が少なくなり、自宅でネット配信動画を楽しむ人が増加中だ。しかし映画館も負けてはいない。ビル6階建て相当の大スクリーンや迫力の音響設備、重厚な内装など、劇場でしか得られない映画体験を追求した館が増え始めている。

「密室」と捉えられがちな映画館だが、実は換気能力は相当高い。新しい館は当初からインフルエンザなどの感染防止を意識し、劇場内を常時換気する設計だからだ。

新型コロナ感染症の流行後は、全国興行生活衛生同業組合連合会が専門家の指針に基づいたガイドラインを策定し対策が徹底された。観客が大声を出すことが少ないため飛沫が飛ぶリスクも低い。最近は「鬼滅の刃」の大ヒットで客足も戻り、新しい設備が本領を発揮し始めている。

エントランスから演出が始まるのグランドシネマサンシャイン(東京都豊島区)

東京・池袋に2019年7月にオープンした「グランドシネマサンシャイン」。全12スクリーンを有する東京都内でも最大級のシネマコンプレックスだ。目玉はIMAXシアターにある高さ18.9メートル×横幅25.8メートルの巨大スクリーン。6階建てビルに相当する高さで、常設スクリーンとしては国内最大となる。

劇場に足を踏み入れ、スクリーンが見えた時点で、見上げるようなその大きさに驚かされる。着席して映画が始まれば、視界すべてが映像で埋め尽くされるような臨場感だ。グランドシネマサンシャインの森内裕貴支配人は「このスクリーンで映画を見たいと遠方から来場する人も多い」と話す。

内装にもこだわりがある。スクリーンに向かう長いエスカレーターには歴代の名作映画のポスターが飾られ、退屈しない。各フロアのモチーフは「アカデミー賞」「ベルリン」などの国際映画祭だ。アカデミー賞のフロアにはレッドカーペットが敷かれ、ベルリンには金熊のトロフィーのレプリカが飾られている。映画好きはもちろん、映画祭に関心がなかった人でも興味を引かれるつくりだ。「映像や音響にこだわる熱心なファンでなくても楽しめる館を目指した」と森内支配人。

丸の内ピカデリー ドルビーシネマ最前列のオットマン付きリクライニングシート(東京都千代田区)

一方、東京・千代田区の「丸の内ピカデリー ドルビーシネマ」も、19年オープンの最新館だ。従来、丸の内ピカデリー3と呼ばれていた館がリニューアルされた。

エントランスに足を踏み入れると、黒を基調とした空間が広がる。黒はこの映画館のキーワード。映像システムに「ドルビービジョン」を活用し、光漏れして白みがかることのない深く純粋な黒色をスクリーン上に表現できる。

シートや壁もすべて黒色で統一しているが、これもスクリーンに光を反射しないためのこだわり。うす暗い映像でもコントラストが鮮明で、登場人物の手元などがはっきり確認できる。

最前列がオットマン付きのリクライニングシートとなっているのもポイント。映画館の最前列は敬遠される傾向があったが、これなら見上げても首が痛くならず、スクリーン全体を眺めることができる。脚を伸ばしてリラックスしながら最前列で観賞できるのは特別感がある。

松竹マルチプレックスシアターズマーケティング部の佐藤礼子氏は「リクライニングシートから席が埋まることもあり、リピート客も多い」と話す。

今年7月にオープンした「TOHOシネマズ池袋」がこだわるのは音だ。「轟音(ごうおん)シアター」では、スクリーンの前に大型のサブウーファー(低音を増強する音響機器)を設置。銃撃戦や爆発のシーンではびりびりと空気が震える。

また「Wプレミアムシアター」と名付けた劇場も。壁一面の巨大スクリーンと立体音響に加え、プレミアボックスシートを用意する。シートが一席ずつコの字形に区切られ半個室のようになっているため、周囲を気にせずくつろげる。自宅では体感できない臨場感を、自宅のようにリラックスして観賞できるのが特徴だ。

(ライター かみゆ編集部・小沼 理)

[2020年12月12日付 日本経済新聞夕刊]

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