漁獲量は、1990年代半ばをピークに減少の一途をたどっており、今では世界の魚資源の82%が乱獲状態にあると考えられている。国連の気候変動に関する政府間パネルは、海洋健全度に関する2019年の特別報告書で、対策を取らなければ魚は2100年までに25%減少する可能性があると警告した。魚資源の回復ができているのは、ノルウェーと米国のみだ。

「漁業に力を入れればもっと魚が取れるということは絶対にありません」と言うのは、ナショナル ジオグラフィック協会付きエクスプローラー(協会が支援する研究者)でもある海洋科学者、エンリック・サラ氏だ。

日本沿岸ではサンマの漁獲量が減少している。持続可能な海洋経済へ向けた計画には、減少した魚資源を回復させることも含まれている(PHOTOGRAPH BY THE YOMIURI SHIMBUN, AP)

同様に、ほんの一部の海を保護したところで(現在、保護区とされているのは世界の海の7%のみ)、海洋の健全度を高めることはできない。30%ですら足りないと考えられている。

「海の一部だけを守って後はあきらめるというのではなく、これ以上悪化しないように100%が管理されなければならない。そういう野心的な目標です」とワーム氏は言う。

日本の参加は「とても大きい」

同時に、「持続可能な管理」というフレーズはあまりに広範かつ曖昧であり、それゆえに懐疑論も多く生まれてきている。著名な水産学者であるカナダ、ブリティッシュコロンビア大学のダニエル・ポーリー氏は、プロジェクトの努力そのものはたたえている。しかし、「持続可能な管理」という語に効果があるかと問われれば懐疑的だ。なお、氏は同プロジェクトには携わっていない。

「『持続可能』という言葉は『豊富』と同義でないことを、一般市民の多くは知りません。低いレベルを含め、様々なレベルを持続させることも『持続可能』と言えるわけです。乱獲されている魚を持続させることも含むのです」

しかし、世界192の沿岸国のうちわずか14カ国が変化を起こせるものかと思うなら、アジア太平洋において大きな影響力を持つ日本が、海の30%を保護するという目標に同意したことを考えてみてほしい。海洋保護区の設定に長く消極的だった日本が方針を変えたことは「とても大きいです」とサラ氏は述べる。

2021年には、いまだ採択に至っていない海洋保護についての条約を引き続き議論すべく、中国で国連生物多様性会議が開催される。日本が海洋保護区の設置を肯定する立場になったことで、中国を含む他の国も考え直すかもしれない。今のところ中国は、国土の30%を保護することを明言しているものの、海の保護については沈黙を守っている。中国が賛同すれば、30%という目標の達成は約束されたも同然だ。

(文 LAURA PARKER、訳 桜木敬子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年12月10日付]

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