法政大学でキャリア論を教えている田中研之輔です。2020年最後の連載となります。さて、2020年、みなさまにとってどんな1年でしたか? SNS(交流サイト)からしばし離れて、振り返る時間をとってみてくださいね。
・年初に掲げたプランは実現できたか?
・心理的幸福感を感じながら、一年間、継続的に学び続けることができたか?
このあたりを振り返ってみてください。2020年は、世界史に刻まれる歴史的な1年であったことは間違いありません。なかでも、つらい思いをしたのは、大学1年生と新卒1年目のみんなですね。地方から上京して、都内のワンルームで一人、オンライン講義を受講し、課題に追われた日々は、これからの人生の中で忘れられない経験です。大学での友達ができなくて、苦労しましたよね。
新卒1年目のみんなは、入社式からオンライン、新人研修もオンライン。その後も、テレワークということで、自宅にいながらビジネススキルを習得した1年だったでしょう。困ったときに、部署の先輩に気軽に聞くことができなかったり、1年目の同僚とも直接会ったり話したり、仕事をする機会がとれずに、よそよそしいまま月日が過ぎていきました。
キャリア論の視点から捉えると、目の前の困難を乗り越えてきた私たちには、以前よりも「レジリエンス」(困難な状況でも適応して生き延びる力)が向上しました。危機というのは、悪いことばかりではないのです。危機に直面し、それを乗り越えようと考え、行動することで、一つ耐性力が身につき、成長したのです。
困難をなんとか乗り越えようとする今、皆さんと考えておきたいのが、これからの働き方についてです。政府主導の働き方改革の推進と、経済界主導の日本型雇用の制度転換。この二つの動きは、どちらもこれまでの「組織内キャリア型の働き方」から「キャリア自律型の働き方」への転換の原動力となるものです。
組織内キャリア型の働き方とは、終身雇用や年功序列に基づき、組織内でのキャリア形成に重きを置く働き方です。キャリア自律型の働き方とは、自ら主体的にキャリア形成していく場として組織を捉える働き方です。組織内キャリア型の働き方からキャリア自律型の働き方への転換は、キャリアのオーナー(所有者)が、組織から個人へと変わることも意味するのです。複業もその流れにあります。