Pascoのコオロギ入り菓子 ナッツの香り、2日で完売

日経クロストレンド

Pascoが発売したコオロギのフィナンシェ
Pascoが発売したコオロギのフィナンシェ
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「Pasco」ブランドで知られる敷島製パン(名古屋市)は2020年12月1日、オンラインショップ限定でコオロギパウダーを使用したフィナンシェとバゲットを販売した。販売開始と同時に注文が入り始め、翌日には売り切れたという。フィナンシェは、コオロギ10匹分と30匹分のパウダーが入った2種類がある。

敷島製パンが今回発売したのは、食用コオロギパウダーを使用した、Pasco未来食Labo「Korogi Cafe」シリーズ。「コオロギのフィナンシェ」(6個入り)を100箱と「コオロギのバゲット」を100本、「フィナンシェとバゲットのセット」を100セット販売したところ、実験的な位置付けのため事前に告知しなかったにもかかわらず、発売直後から注文が続き、2日目にはすべての商品が完売した。

コオロギのバゲット。コオロギのシールが目印

Pasco開発本部の栗田木綿子氏は、「売れるか売れないか、0か100だと思っていましたが、販売開始直後は1分に1個ペースで売れていたので、いけると確信しました」と振り返る。

コオロギ10匹と30匹の2種で、「実感しやすくする」

コオロギのフィナンシェは、コオロギパウダー「10匹分」と「30匹分」の2種類が3個ずつ入っている。30匹分のほうが色味が濃く、ナッツのような香りを強く感じた。味は一般的なフィナンシェとほとんど変わらないが、食べ比べると30匹分のほうがモッチリとした食感があった。「10匹と30匹を比較することで、味の違いからコオロギを食べていることが実感しやすくなります。これがコオロギの味なんだということを実感してもらい、昆虫食のハードルを下げるために、2段階に分けました」と栗田氏。20匹分も入れて3段階にする案もあったが、味の差が分かりにくくなるため断念。50匹分はザラっとした感じが口の中に残り、食べにくさから採用が見送られた。

写真左がコオロギ10匹分、右が30匹分のフィナンシェ。30匹の方が色が濃い
断面を見ても、30匹の方が濃いことが分かる

バゲットの見た目や味は、ライ麦パンに近い。オーブンで焼いてバターを付けると、普通のパンと同じように楽しむことができた。バゲットには100匹分のパウダーを使用している。

コオロギのバゲット。一般的なライ麦パンと同じように楽しめる

コオロギは世界の環境問題や食糧危機を解決するのに役立つ資源の1つとされる。飼育に必要なエサや排出する温暖化ガスが牛や豚などの飼育に比べて少なく、重さの6~7割がたんぱく質だ。環境に優しい社会を目指す、サステナブルな考え方が広がる中で、次世代のたんぱく質として注目を浴びている。

敷島製パンは17年から昆虫の食用利用について調査研究を始めた。フタホシコオロギやヨーロッパイエコオロギを使った5種類のパウダーを世界中から集め、18年秋からさまざまなパンで試作を開始。しかし、「粒子が粗かったり、口の中に違和感が残ったりする課題があり、商品とうまく組み合わせることができなかった」(栗田氏)。

試行錯誤を続ける中、19年10月に出合ったのが、高崎経済大学発のベンチャー企業であるFuturenaut(フューチャーノート、群馬県高崎市)だった。タイで生産されたヨーロッパイエコオロギを使用したパウダーで、「他のサンプルに比べるとクセがなく、不快な苦みや後味が残らない。粒子が細かく香りもよいことから、パンに合うと考えました」(栗田氏)。

20年2月には、社内に昆虫食などを研究する「未来食研究開発プロジェクト」が立ち上がった。パンの種類をバゲットに決定し、商品にフィナンシェを加え、製品化に向けて大きく動き出した。

発売までの半年間で、コオロギを扱うことのリスクを下げるためのいろいろな工夫をしたという。例えば、「他のパンがおいしくなくなる」といった風評被害を想定し、専用の施設で製造していることを明記。また、パウダーにはエビやカニに似た成分が含まれるが、コオロギにアレルギー表示の決まりはない。安全を考え、箱に「本品で使用している食用コオロギパウダーは、エビやカニなどの甲殻類と類似した成分が含まれています。エビやカニのアレルギーをお持ちの方はお控えください」といった一文を記載することなどを、消費者庁と話し合ってきた。

Korogi Cafeシリーズは実験的な位置付けということもあり、大量生産が難しい。21年1月下旬には数量限定で再販を予定している。その売れ行きも見つつ、さらに商品ラインアップを広げていく考えだ。

(日経トレンディ 寺村貴彰)

[日経クロストレンド 2020年12月11日の記事を再構成]

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