逆に言えば、買い手にとってはそういう物件の価格交渉はやりやすくなります。つまり、これから中古マンションを購入しようとする側にとっては、任意売却物件を見つけて価格交渉をすれば、相応の値引きを引き出せる可能性があることになります。

買取再販、割引率は高くなるが……

このような購入方法はまるで人の弱みに付け込むようで、罪悪感を抱く人もいるでしょう。ただ、売り主は定められた期間内に普通に売れなければ、無理にでも売却を成立させなければなりません。その場合は「買取再販」が専門の業者に売ることになります。

買取再販の業者は、そういった物件を安く買い取って高く売ることで差益を稼ぐ業態です。スピーディーに売却することを主眼に置いているので、業者の買値は高くて市場価格の8割、安い場合は6割から5割になります。ということは、一般の人からの売り出し価格の、例えば1割引きで買う場合よりもかなり安くなるのです。

このため、任意売却物件を1割程度の値引きの状態で売ることができれば、売り主にとってはローンの精算がよりスムーズに進む、という考え方もできます。

売り主と直接つながっている業者を探す

では、市場に出ている多くの中古のマンションや戸建てのなかで、どれが任意売却物件なのか、見分けるヒントを説明しましょう。

前述の通り、ネットを見ているだけでは任意売却物件を見つけることはほぼ不可能ですが、入り口はやはりネットにあります。気に入った物件が見つかったら、例えばスーモなら「お問い合わせ先」、ホームズなら物件詳細情報に「取引態様」という項目があります。そこで「専属専任媒介」あるいは「専任媒介」となっている物件を選んでください。

売り主が1社とだけ媒介契約している物件で、そういう業者は売り主から直接売却を依頼されています。そこが「仲介」となっている場合、直接売り主につながっていない場合がほとんどです。そのような場合、そのサイト内やほかのサイトで同じ物件を「専属」や「専任」で出ていないか探してみることです。あれば、その業者に連絡すべきです。

売り主と直接つながっている業者は、売り主の事情を知っています。任意売却であれば、それも承知しているはずです。どこまで値引きが可能かも、売り主と打ち合わせ済みであるケースもあります。つまり、そういう業者を通した場合の価格交渉はスムーズです。

市場をしっかり観察、有利な購入を

ところが、ただの「仲介」の場合は、売り主との間にさらに別の「専属」なり「専任」の業者が入ることになります。交渉をするにも、これらの業者を介することになるので、やや複雑になります。

また、業者によっては交渉を仲介することを面倒くさがり、事情も分からず「値引き交渉はできません」などと説明してしまうケースも多いものです。

21年は任意売却物件が多く中古市場に出てくる可能性があります。買い手としては市場をしっかり観察しながら、より有利な購入をめざすべきでしょう。

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「一生の買い物」といわれる住まいの購入。誰しも失敗はしたくないでしょう。戸建てやマンションの最新情報のほか、販売業者などの事情にも精通する榊淳司氏が、後悔しない住まいの選び方をアドバイスします。

榊淳司
住宅・不動産ジャーナリスト。榊マンション市場研究所を主宰。新築マンションの広告を企画・制作する会社を創業・経営した後、2009年から住宅関係のジャーナリズム活動を開始。最新の著書は「限界のタワーマンション(集英社新書)」。新聞・雑誌、ネットメディアへ執筆する傍らテレビ・ラジオへの出演も多数。