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ブレンドの味づくりは、特にオフィス用を意識したものではない。ただ、ブレンドに関しては粕谷さん独特のこだわりがある。それは「おいしすぎないコーヒー」であることだ。

「僕はおいしさが目立ちすぎないように心がけています。仕事をしながら、何気なくすっと飲んで、ふと『あ、これおいしいな』と思えるぐらいのほうが飽きられない。浅煎(い)り、中煎り、中深煎りの3種類があるので、気分に合わせて選んでもらえれば」

Scropの中嶋太郎さんはマルハンダイニングが米ZOKAのコーヒー店を日本展開し始めた2005年に「コーヒーの仕事をしたいから」入社した

オフィスコーヒーを含むBtoB市場に高級コーヒーで攻勢をかける業者はほかにもある。東京・青山と千葉・流山にカフェ「Scrop COFFEE ROASTERS」を展開するマルハンダイニング(東京・江東)だ。

Scropはゲイシャ種を中核とするスペシャルティの専門店。BtoB事業に力を入れ始めたのは3年ほど前で、IT系などの大企業約10社で企業内カフェの設置に携わった実績がある。抽出などの技術を監修するほか、実際にカフェを運営する給食会社に自社の豆を販売。「スペシャルティを配合した自社ブレンドと、小ロットの顧客専用ブレンドを提供するのがウチの特徴です」と第2営業部Scrop運営課長の中嶋太郎さんは話す。

リモートワークの拡大で既存の企業内カフェの売り上げは一時的に減少した。だが優秀な従業員を囲い込む福利厚生の充実の一環として、今もカフェスペースなどの設置を検討する大手企業は少なくないという。中嶋さんは「カフェ導入はオフィスの移転などがきっかけになる。今後もそういう事例は出てくるし、実際にいくつか引き合いがあります」と語る。

業界イベントでScropのブースに並べられた様々なドリップバッグ。このビジネスは企業内カフェの商談中、相手側から提案されて始めた

BtoB事業のもう一つの柱として今秋から攻勢をかけているのが、スペシャルティを使うドリップバッグの製造受託だ。催事用商品や営業活動のノベルティとして、顧客オリジナルのブレンドを1000個から受注する。顧客は大手企業のほかスポーツチームや個人事業主に及ぶ。

「スペシャルティの高品質なイメージをブランディングに活用したい、という需要が目立つ」。今後、コワーキングスペースやシェアオフィスからの受注にも期待を寄せる。リモートワーク中の息抜き用に、企業がコーヒーバッグを社員に提供する動きも出始めたという。

コロナは働き方をガラリと変え、同時に「仕事」という日常にコーヒーがもたらす効用を再認識させてくれた。閉塞感が漂う今だからこそ、癒やしとやすらぎの上質な1杯を、職場に常備する余裕がほしくなる。

(名出晃)

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