2020年の携帯電話業界は、東京五輪で大々的なアピールをするはずだった高速通信規格「5G」が新型コロナウイルスによる開催延期で失速。一方、9月に発足した菅政権は、料金引き下げの圧力を一層強めた。4月には第4の携帯電話事業者として楽天モバイルが本格サービスを開始、9月にはNTTがNTTドコモの完全子会社化を発表するなど、「激震」が相次いだ携帯電話業界の1年をユーザー目線で振り返ってみたい。
サブブランドから始まった値下げだが…
20年の携帯電話業界を表す漢字は何かと聞かれたら、筆者は迷わず「菅」と答えるだろう。それくらい20年の携帯電話業界は、首相に就任した菅義偉氏に大きく振り回された。
9月16日に就任した菅首相は、前職の官房長官時代から、携帯電話市場はNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手3社の寡占状態にあり料金が高止まりしていると強く批判し、料金の引き下げを訴え続けてきた。そんな同氏が国のトップとなり、携帯料金引き下げを政権公約としたことで、携帯電話業界、とりわけ大手3社は非常に強い値下げ圧力を受けた。
総務相に就任した武田良太氏も積極的に動いた。その意を受けて総務省は10月27日、携帯電話料金の引き下げに向けた政策をまとめた「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」を公開した。

アクション・プランの発表を受け、KDDIとソフトバンクは「UQ mobile」「ワイモバイル」といったそれぞれのサブブランドで、20ギガバイト(ギガは10億、GB)の大容量通信を4000円前後(税別、以下同)で利用できるリーズナブルなプランを発表した。当初はこれらのプランを評価していた武田総務相だが、11月20日に考えを一変。会見で「メインブランドでは全く新しいプランが発表されていない。これが問題だ」と述べた。
