ただ、コンテキストによるリーダーシップは、正しい条件が揃っていなければうまくいきません。一つの要件は能力密度の高さです。コンテキストについて箇条書きでまとめた部分を引用しましょう。なお、「疎結合」というのはシステムデザインの用語で、「密結合」と対をなす概念です。密結合は、システムを構成するコンポーネントが密接に結びついている状態です。システムの一部を変えようと思ったら、土台まで作り直すことが必要になります。一方、疎結合はコンポーネント間の相互依存が低い。そのため、土台から変更しなくても、個別のコンポーネントを修理できるのが特徴となります。

・コンテキストによるリーダーシップを実践する条件は、能力密度が高く、組織の目標は(ミス防止ではなく)イノベーションで、疎結合な組織であることだ。
・こうした要素が整ったら、社員に何をすべきか指示するのではなく、彼らが優れた意思決定をできるように、あらゆるコンテキストを提供し、議論を重ね、しっかり足並みを揃えよう。
・部下が何かバカなことをしても、責めてはいけない。むしろ自分が設定したコンテキストのどこが間違っていたのかを自問しよう。目標や戦略を正確に、そして部下の創造力を刺激するように伝えただろうか。チームが優れた意思決定をできるように、すべての前提条件やリスクを明確に説明しただろうか。ビジョンと目標について、あなたと部下の認識は一致しているだろうか。
・疎結合な組織は、ピラミッドではなく木のようだ。トップは根として幹にあたる上級管理職を支え、上級管理職は実際に意思決定をする枝を支える。
・経営トップや幹部から受け取った情報をもとに、社員が自らすばらしい意思決定を下し、チームを望ましい方向へと動かしているなら、コンテキストによるリーダーシップがうまく機能しているサインだ。
(第9章 コントロールではなくコンテキストを 390~391ページ)

ネットフリックスは米国においても極めてユニークな企業組織だと思います。まして、チームの和を重視する日本企業で働く私たちには、理解しにくい部分が多いといえます。ただ、ネットフリックスはグローバル展開に成功しており、日本でもすっかり定着しました。日本のオフィスで働く社員のインタビューが、第10章「すべてのサービスを世界へ」で詳しく紹介されていて、「自由と責任」のカルチャーと日本的な仕事観とのギャップが活写されています。

本書は冒頭、「はじめに」の20数ページに全体構成と論点がコンパクトにまとめてあります。「はじめに」を読んだ後、いったん第10章に飛んで東京の事例を読む。それから本の最初に戻って、通読する――。伝統的な企業に勤めている読者には、そんな読み方もおすすめできます。

◆編集者からひと言 日本経済新聞出版・金東洋

コロナ禍で、テレビはまた娯楽の中心に戻ったといえるでしょう――ただし昔とは違う形で。いまテレビはネットフリックスなどの動画配信サービスのスクリーンと化しつつあります。全世界190カ国に約2億人という有料会員を抱え、内製化した独自コンテンツで顧客を引き留め続けるネットフリックスは、競争の激しい業界で独自の勝ちパターンを築いているように見えます。

本書では、そんな「常勝集団」がどのように築かれたのかを、共同創業者・CEOのリード・ヘイスティングス氏とINSEAD教授で企業文化研究者として名高いエリン・メイヤー氏が、社員へのインタビューをベースに解き明かしています。

興味深いのは、そもそもメイヤー教授が当初、ネットフリックス・カルチャーのことを「大嫌い」と評していたことです。「マッチョ的で、過度に対立を煽り、きわめて攻撃的に思えた」としています。ところが、ネットフリックスはこのカルチャーを全世界で徹底することで、圧倒的に成功しているのです。

読者の方が想像するとおり、ネットフリックス・カルチャーは、日本の文化とほぼ正反対です。本書第10章では、メイヤー教授が開発した「カルチャー・マップ」の手法を使って、ネットフリックスと日本の文化の違いを解説し、さらに日本オフィスへのカルチャー導入時に直面した壁についても触れています。

「うちの会社は超日本的企業だから、こんなの無理だよ」と思っている方、ぜひ第10章を読んでみてください!

一日に数百冊が世に出るとされる新刊書籍の中で、本当に「読む価値がある本」は何か。「若手リーダーに贈る教科書」では、書籍づくりの第一線に立つ出版社の編集者が20~30代のリーダーに今読んでほしい自社刊行本の「イチオシ」を紹介します。

NO RULES(ノー・ルールズ) 世界一「自由」な会社、NETFLIX

著者 : リード・ヘイスティングス
出版 : 日本経済新聞出版
価格 : 2,420 円(税込み)

ビジネス書などの書評を紹介