2021/1/3
今回は280kmほどの道のりを試乗。満タン法で22.0km/リッター、車載計測機で20.9km/リッターの燃費を記録した

着座位置が高く、前方視界は良好だ。SUVが支持されている理由のひとつである。この感覚を覚えてしまうと、コンパクトカーやセダンに戻れないのだろう。ボディーが大きいのだから車重が増えるわけだが、ヤリスからの増加はそれほど大きくない。試乗車は1.2tほどで、鈍重な感じはなかった。ヤリス クロスに与えられるエンジンは3気筒1.5リッターの1種類のみ。ハイブリッドモデルにはモーターも加わるが、システム出力はガソリン車よりわずかに劣る。しかし、動力性能に不満は感じなかった。元気に走っても、燃費はなかなか20km/リッターを下回らない。

コンパクトで視界がいいから、街乗りで実用性の高さを見せる。日常で使いやすいのに加え、遠出するのも得意分野だ。先進安全機能の「Toyota Safety Sense」はほぼ全グレードで標準装備となっている。ACC(アダプティブクルーズコントロール)はたまに車線を見失うが、出来は悪くなかった。山道でも軽やかな身のこなしを見せる。特にスポーティーな走りではないけれど、家族と一緒のドライブには向いているだろう。

最高出力91PSの1.5リッター直3エンジンに、最高出力80PSの電気モーターを組み合わせたハイブリッドユニット。「ハイブリッドZ」の場合、WLTCモードの燃費値は27.8km/リッターと公表される
サスペンションの形式は、フロントがマクファーソンストラット式でリア(FF車)がトーションビーム式。なお、4WD車のリアはダブルウイッシュボーン式となる

オートパーキングも秀逸

試乗車にはオプションで「トヨタチームメイト アドバンストパーク」が装備されていた。いわゆるオートパーキングである。何度も痛い目に遭ってきたのであまり期待せずに試してみたが、実に秀逸な出来だった。駐車スペースを見つけるのが素早いのがありがたい。いつまでも探し続けてシステムが始動しないクルマが多いのだ。

シフト操作は手動だが、直感的な操作で確実に枠の中に駐車することができる。ダイハツの「スマートパノラマパーキングアシスト」に似ているが、より簡単だった。すべてが自動の「日産リーフ」にはかなわないが、実用になるレベルである。自動駐車をうたいながら何度も切り替えしたあげく“極道止め”になってしまうクルマは猛省してほしい。

「ヤリス クロス」には、トヨタのSUVとして初めて、ステアリングとアクセル、ブレーキを制御する駐車支援システムが用意される。並列駐車と縦列での駐車・出庫が可能となるほか、駐車区画のラインがないスペースでも利用できる

SUVが主流になりつつある中で、トヨタはバリエーションを拡大している。「ハリアー」と「RAV4」でミドルサイズをカバーした上で、コンパクトでも万全の態勢を整えた。ヤリス クロスはボリュームゾーンに向けて投じられたモデルで、コンパクトカーのヤリスより存在感を強めていく可能性が高い。2020年7月にはタイで「カローラ クロス」が発売されており、トヨタはSUVのフルラインアップ化を進めているように見える。

2020年11月11日に衝撃的な一部報道があった。「クラウン」がセダンからSUVに移行するというのである。真相は不明だが、2年前に兆しがあった。15代目クラウンの開発者インタビューで、チーフエンジニア秋山 晃氏は「本当はクラウンというブランドの中にいろいろな車体形状があってもいいんですよ。クラウンのSUVとかミニバンとかね」と話していた。デザイナーの國重 健氏に可能かと尋ねると「できると思います。今、頭の中でモーフィングができました」と答えたのだ。ヤリス クロスは試金石である。快進撃を続ければ、トヨタのSUV路線が加速するのを止めることができなくなるかもしれない。

(ライター 鈴木真人)

■テスト車のデータ
トヨタ・ヤリス クロス ハイブリッドZ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4180×1765×1560mm
ホイールベース:2560mm
車重:1190kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直3 DOHC 12バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:91PS(67kW)/5500rpm
エンジン最大トルク:120N・m(12.2kgf・m)/3800-4800rpm
モーター最高出力:80PS(59kW)
モーター最大トルク:141N・m(14.4kgf・m)
タイヤ:(前)215/50R18 92V/(後)215/50R18 92V(ダンロップ・エナセーブEC300+)
燃費:27.8km/リッター(WLTCモード)/31.3km/リッター(JC08モード)
価格:258万4000円/テスト車=323万7785円
オプション装備:ボディーカラー<ブラックマイカ×ホワイトパールクリスタルシャイン>(7万7000円)/ステアリングヒーター(1万1000円)/アクセサリーコンセント<AC100V・1500W、1個、非常時給電システム付き>(4万4000円)/ハンズフリーパワーバックドア<はさみ込み防止機能・停止位置メモリー機能・予約ロック機能付き>(7万7000円)/アダプティブハイビームシステム<AHS>+カラーヘッドアップディスプレー(9万9000円)/ブラインドスポットモニター<BMS>+リアクロストラフィックオートブレーキ<パーキングサポートブレーキ[後方接近車両]>(4万9500円)/トヨタチームメイト アドバンストパーク<パノラミックビューモニター付き>(7万1500円 ※同時選択により7万7000円から減額) ※以下、販売店オプション T-Connectナビキット(11万円)/フレックスベルト<2本入り>(3960円)/アームレスト(1万9800円)/ETC2.0ユニット<ビルトイン>ボイスタイプ(2万5575円)/カメラ別体型ドライブレコーダー<フロントカメラタイプ>(4万1800円)/フロアマット<デラックス>(2万3650円)

[webCG 2020年12月4日の記事を再構成]

MONO TRENDY連載記事一覧