2021/1/3
「トヨタ・ヤリス クロス」の価格帯は、ハイブリッド車で228万4000円から281万5000円。ガソリン車では179万8000円から244万1000円となっている

万人向けなカタチがポイント

撮影しながら、カメラマンK氏がつぶやいた。

「ヤリス クロスって、お笑い芸人みたいな名前ですね」

確かに、吉本興業の養成所にそんな若手漫才コンビがいそうな気がする。しかし、名前の響きとは裏腹に、ルックスは至って端正だ。そもそも、ヤリスという名はギリシャ神話の女神が元になっている。

フロントグリルのデザインは、コンパクトカーのヤリスとは別物である。愛嬌(あいきょう)や親しみやすさは追求していない。ファニーな印象を排したシンプルな造形だ。高い位置にあるリアコンビネーションランプは水平基調でクールさを醸し出している。むやみに要素を増やしてインパクトを狙うような振る舞いがないので、万人に受け入れられるはずだ。トヨタデザインはディテールに富んだ複雑で華やかな造形を目指していた時期があったが、方針転換したのではないか。歓迎すべきだと思う。

ロントまわりは上下2段の大径グリルで踏ん張り感を表現。バンパーコーナーの凝った造形は空力性能の向上に貢献する

全体的にミニマルで雑みのないデザインだが、ちょっとしたSUV的な演出もある。角張ったホイールアーチで力感を表現して野性味をプラス。フェンダーを張り出させているが、過剰感がなくナチュラルだ。ポップな雰囲気もミックスされている。リアハッチを寝かせてトレンドのクーペ的なフォルムも取り入れた。それでいて390リッターの荷室容量を確保しており、実用性に支障はない。

インテリアは少し印象が異なる。エクステリアほどの洗練は感じられなかった。特にドアトリムの素材は好悪が分かれてもおかしくない。フェルトのような感触は温かみを感じさせるともいえるが、エクステリアとは方向性が違うような気がする。ダッシュボードのデザインはいかにも乗用車然としていて、SUVの特別感が見えないのはちょっともったいない。

荷室6:4分割式のフロアパネルが特徴。写真のように、荷物に合わせてフロアレベルを変えられる。長尺物には3分割式の後席を倒すことで対応できる

あまりのおもてなしにビックリ

運転席に座ってシートを調整しようとして戸惑った。前方にレバーがないのだ。まさかと思って側面を探ったら、電動スイッチが備わっていた。このクラスだとシート調整は手動が普通なので驚いたのだ。少し前に逆の経験をした。試乗車より200万円ほど高価なコンパクトSUVのシートが手動調整だったのだ。電動でも手動でも機能は同じだが、ドライバーの気分は変わる。

ただ、動かすときにビックリするほど大きな音がする。コストダウンのためにモーターを1個にして、複雑な機構で動作させているそうだ。お金をかけずに知恵を使う。涙ぐましい努力である。試乗車のグレードにはシートヒーターが標準で、ステアリングヒーターがオプションで装備されていた。さらに、ジェスチャーコントロールの電動リアハッチも。トヨタ伝統のおもてなしが充実していて、厚遇されていると感じるのは気持ちのいいものだ。

試乗車「ハイブリッドZ」の前席はシートヒーター付き。運転席には6ウェイの電動調節機構も備わる
シートの仕様は全3タイプ。上級グレードの「Z」「ハイブリッドZ」のものは、合成皮革とツイード調ファブリックで仕立てられている
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