廃棄物の発生抑えるReduceを最優先に

井出留美氏

井出留美氏の話 食品ロスの削減には、さまざまなアプローチがあります。余ったものを値引き販売して余剰食品の活用につなげる方法は重要ですが、それだけでは不十分です。並行して、そもそも根っこである余剰食品を減らす努力をしていかなければ本質的な解決にはつながりません。本来は、適量販売が理想です。なのに、なぜそれができないのでしょうか。企業の商慣習や消費者心理など様々なハードルがあります。それぞれの立場で何をすればいいのか、といったことを考える時期に来ています。

適量を販売する動きは、各地で広がっています。平和堂とイズミヤは京都市との実証実験で、販売期限で棚から撤去せず、消費期限・賞味期限ギリギリまで売ってみました。その結果、食品ロスが10%減り、売上が5.7%増えました。元気寿司は、まわっているところに寿司を置かず、お客さんの注文を受けてから出すようにしたところ、ロスが減り、売上が1.5倍に伸びています。広島市のブーランジェリー・ドリアンは、2015年秋から捨てるパンをゼロにし、働く人は8名から2名へ、休みは増やしました。それでも年商3300万円を維持しています。

日本は食品の品質管理や安全性を守ることに、世界一といっても過言ではないくらい神経質です。期限の迫った食品を再利用・再販売することに懸念を示す傾向があります。「何かあったら自社の責任になってしまう」と考え「だったら廃棄しよう」となるのです。こうした社会環境を考えても、Reduce(ロスを減らす・廃棄物の発生を抑制する)の取り組みがとても大切になります。

わたしたちは地球資源が無限だと勘違いしていましたが、実は有限でした。地球の誕生からはるか後に人間が生まれたわけで、地球と比べたら人間はずっと「後輩」です。なのに、あるものすべて、我がもの顔で使い放題の生活をしてきたため、いま、そのツケがきています。だからこそ、江戸時代にそうしていたように、あるものでまかなう生活を取り戻さなければなりません。

井出留美
 食品ロス問題ジャーナリスト。office 3.11(埼玉県川口市)代表取締役。奈良女子大学食物学科卒。博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。食品ロス問題を全国的に注目されるレベルまで引き上げたとして第2回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース「個人オーサーアワード2018」受賞。

(若杉敏也)

あるものでまかなう生活

著者 : 井出 留美
出版 : 日本経済新聞出版
価格 : 1,540 円(税込み)