スペースX、野口さん乗せISS到着 賭けに勝ったNASA

日経ナショナル ジオグラフィック社

2020/11/21

08年に実施されたCOTSの第2回の投資では、NASAはオービタル・サイエンシズ(現在はノースロップ・グラマンの子会社)を選んだ。2億8800万ドル(約302億円)を獲得した同社は宇宙船「シグナス」とアンタレスロケットを開発した(シグナスは13年からISSへの貨物輸送を行っている)。

国際宇宙ステーションから帰還したロバート・ベンケン宇宙飛行士。Demo-2ミッションで国際宇宙ステーションに送り届けられた彼は、宇宙に64日間滞在した後、20年8月2日にダグラス・ハーリー宇宙飛行士とともにスペースXのクルードラゴン「エンデバー」号で地上に帰還した。エンデバー号はフロリダ州ペンサコーラ沖のメキシコ湾に着水し、スペースXの回収船に回収された(PHOTOGRAPH BY BILL INGALLS, NASA)

スペースXとオービタル・サイエンシズが新たな宇宙船の開発に取り組むようになったこの頃、NASAは、商業宇宙飛行はもはやギャンブルではないと確信するようになる。スペースシャトルは11年に退役することが決まり、次世代宇宙船の開発計画は予算を得られず頓挫していた。米国がISSへの補給手段を確保するためには、民間の産業界からの供給が必要だった。

スペースXが最初の打ち上げに成功してから3カ月後の08年、NASAはISSに物資を運ぶために、オービタル・サイエンシズとの間で19億ドル(2000億円)、スペースXとの間で16億ドル(1700億円)の商業補給サービス(CRS)契約を結んだ。

民間に有人飛行の責任を委ねてよいのか?

スペースXとオービタル・サイエンシズが補給ミッションの打ち上げに向けて前進する中、NASAは、民間企業が貨物だけでなく人間も打ち上げることができるかどうかを真剣に考え始めた。

11年、NASAは商業乗員輸送プログラム(CCP)を発表し、最終的にスペースXが26億ドル(2700億円)、ボーイングが42億ドル(4400億円)の予算を獲得して、それぞれ有人宇宙船「クルードラゴン」と「CST-100スターライナー」を開発した。

しかし、NASAがこれまで負ってきた有人宇宙飛行の責任を民間企業に引き渡すのは簡単ではない。人間の打ち上げは「NASAが誕生して以来、特別な方法で行われてきました」とマカリスター氏は言う。「宇宙時代が始まって以来ずっと、私たちはこれらの決定を行い、責任を負ってきました」

スペースシャトル「チャレンジャー」と「コロンビア」、そしてこれらに搭乗していた14人の宇宙飛行士を失ったことは、有人宇宙飛行におけるミスがどのような結果をもたらすかを浮き彫りにした。「あの経験はNASAのDNAに深く刻まれました」とマカリスター氏は言う。有人宇宙飛行を民間企業に委ねることについては、NASAの内部だけでなく、当時のオバマ政権、議会、一般市民の間でも激しい論争になった。

懸念の一つは、スペースXが宇宙飛行における新たな文化を代表する存在であったことだ。NASAの中には、彼らの大胆すぎるアプローチにぞっとする人もいれば、新鮮さを感じる人もいた。

「スペースXは、設立者イーロン・マスク氏の向こう見ずな性格がよく表れている企業です。しかし彼らの技術的アプローチには、高い柔軟性とスマートさがあります」と、ジョージ・ワシントン大学の名誉教授である宇宙史家のジョン・ログスドン氏は語る。

19年4月11日、通信衛星アラブサット-6を軌道に投入した後、フロリダ州のケープ・カナベラル空軍基地にほぼ同時に着陸するスペースXのファルコンヘビーロケットの2基のサイドブースター(PHOTOGRAPH BY SPACEX)

スミソニアン国立航空宇宙博物館のキュレーターである歴史家のジェニファー・レバスール氏は、「スペースXは、グーグルやフェイスブックと同じタイプの企業です。伝統的な企業とは、世代が全然違うのです。お役所仕事のようなところはなく、全員が猛烈な勢いでプロジェクトに取り組んでいます」と言う。

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