ゴキブリ駆除剤・先回り消臭…日用品2020年ヒット商品
2020年ヒット商品
日経トレンディは12月号で2020年の「2020年ヒット商品ベスト30」を発表した。新型コロナウイルスは世情を反映し、予想外のヒットも多く誕生。ヒット30に選出されたものを含め、主要11業界のヒットを網羅。ここでは日用品・雑貨の分野を紹介する。
日用品大賞はゴキブリムエンダー
日用品の大賞は、全体のランキング10位の「ゴキブリムエンダー」だ。ゴキブリの姿を見ずに退治したいけど、「くん煙剤」は面倒……、そんな人に「救世主」となった。大日本除虫菊(金鳥)が2月に発売したスプレータイプのゴキブリ駆除剤で、ゴキブリに向けて噴射するのではなく、部屋の空間に何度かプッシュして使う。細かな殺虫成分が隅まで行きわたり、床面を中心に薬剤が付着することでゴキブリを追い出し、駆除する。
用途としてはくん煙剤に近い。もっとも、煙や霧を室内に充満させるくん煙剤と違い、食器類や家電をカバーする事前の準備や、使用後の後片付けは不要。1部屋だけの駆除もでき、使用中に外出する必要も無い。
蚊取り線香や殺虫スプレーで使われる安全性の高いピレスロイド系薬剤を使い、無煙でも高い効果が得られるスプレー駆除剤を約10年をかけて完成させた。
この画期的な使い勝手の良さが認知されて次第に販売を伸ばし、発売2カ月後の4月以降は、くん煙剤の2大ブランドである「アースレッド」(アース製薬)、「バルサン」(レック)に伍(ご)するほどの売れ行きを見せた。従来品と食い合うのではなく、新たな顧客を開拓することで、くん煙剤市場でいきなり3割程度のシェアを獲得したのだ。
床の菌の増殖を防ぐファブリーズ
「ファブリーズ W消臭トイレ用消臭剤+抗菌」(P&G)も全体の17位となった。家にいる時間や人数が増えたら、トイレのにおいが余計に気になるように──。そんな悩みをタイミング良く解決して売れた。
トイレの壁に染み付いたにおいまで防ぐ従来品の機能に、床の菌の増殖を防ぐ「24時間抗菌」効果も新たに加えて4月に全国発売。以降、トイレ用消臭剤の市場拡大のけん引役となっている。
床の抗菌効果が加わることで、新たなにおいがより発生しにくくなり、掃除の手間も減ると期待できる。消費者の抗菌意識が全体的に高まったことも売れ行きを後押し。どこに置いても悪目立ちしないシンプルなデザインも受け、トイレ用消臭剤を使っていなかった人の購入も促した。
この商品が原動力となり、P&Gのシェアは3月以前の10%台から30%超に倍増。トイレ用消臭剤ではエステー、小林製薬の2強状態が続いていたが、完全な三つ巴に市場構造が変化。デザイン性の向上、消臭技術の加速という新たな競争のトレンドも生んだ。
「CHARMY Magica 速乾+」(ライオン)は水切れが良いため皿などが速く乾き、拭くストレスも軽減できる食器用洗剤。その速乾性に驚いた利用者の声がSNSを中心に広がり、20年4~8月には前年同期比150%の販売実績(金額)を達成。家事をラクにするアイテムとして受け入れられた。
「ウタマロ石けん専用ケース付き」(東邦)は人気の洗濯せっけんと専用ケースのセット。19年8月から限定販売を開始し、20年10月までに累計約11万個を売り切った。約60年の歴史を持つ「ウタマロ石けん」の専用ケースはこれが初めてで、利用者の反響が大きかったという。
「キュキュット あとラクミスト」(花王)は食器にスプレーして置いておくと、後でラクに洗えるという洗剤。外出自粛で自宅での食事が増え、食器洗いの負担を軽減したいというニーズに合致した。20年4月の発売から3カ月で140万本出荷。当初計画していた1.5倍の売れ行きを記録した。
先回りしてブロックで100万個超え
「消臭力 DEOX トイレ用」(エステー)は従来の消臭効果に加え、便臭を感じるレセプターを香り成分が先回りしてブロックする新タイプの消臭剤。在宅時間の増加による家族間のニオイケアとして注目され、7月の初回出荷で100万個超えを達成した。
「レノアリセット」(P&G)は「衣類のダメージケア」という従来の柔軟剤にはない付加価値が売りで、20年4月の発売から6カ月で約550万本を出荷するヒットに。市場が伸びている柔軟剤の中で、「レノア」ブランドのシェアをさらに押し上げる原動力になった。
消毒用アルコールが品薄になったことに加え、手が荒れにくいなどのメリットで改めて注目されたのが「ノンアルコール除菌剤」。「イータック抗菌化スプレーα」(エーザイ)は直近で前年同期比2.5倍の勢いで売れているという。
「シュミテクト ハブラシ やさしく歯周ケア(3次元フィット、極細シルキー毛)」は知覚過敏用に開発された歯ブラシ。19年10月発売。日本人の手の大きさや指の長さなどに合わせた設計で、知覚過敏症予防ハミガキ「シュミテクト」のブランド力と相まって、歯ブラシ市場が横ばいの中、前年比19.5%増を達成した。
「ライフリー 歩行アシストパンツ」(ユニ・チャーム)は20年2月に発売された、バランス良く歩くことをコンセプトに開発された大人用紙パンツ。骨盤をサポートする機能や股下が伸びて歩幅を広げやすいストレッチ構造など高齢者の歩行をアシストする付加価値がアクティブシニア層を中心に受けた。
「バーミキュラ フライパン」(愛知ドビー)は新開発のホーローコーティングと鋳鉄を組み合わせたフライパン。鋳物ホーローでありながら薄く加工することで女性でも簡単に扱える軽さを実現。20年4月の発売から予約が殺到し、5カ月で10万台を突破。現在も約4カ月待ちの状態が続いている。
Bauhutte(バウヒュッテ)の「ぼっちてんと BBT1-130」はデスクや椅子もまるごと入れられる、高さ150cmの室内用テント。発売は14年だが、テレワーク需要を受け20年4月時点で前年比約3倍の売り上げを記録。自宅学習をする学生の勉強スペースとしても使われた。
[日経トレンディ2020年12月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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