経済理論はもちろん、万能ではありませんが、日本でも応用できる余地は大きそうです。理論を生かせる分野を発掘し、実用性を高めていくのは、経済学者の役割の一つといえるでしょう。

坂井豊貴・慶応義塾大学教授「理論だけでは世の中は変わらない」

経済理論を活用して制度を設計する「メカニズムデザイン」が日本でも徐々に広がってきました。第一人者である、慶応義塾大学の坂井豊貴教授に、現状と今後の見通しを聞きました。

――不動産オークションの会社には、どんな形で協力しているのですか。

坂井豊貴・慶応義塾大学教授

「2018年4月からデューデリ&ディール社のチーフエコノミストを兼務しています。個々の案件というよりも、全体について助言しています。例えば、ある物件を売るときにオークションをするほうがよいのか、その物件を買いたいという特定の人に売るほうがよいのかを判断するのはなかなか難しいのですが、その判断基準を理論的に作ります。過去の取引データも活用し、売り主にとってどちらが得かを類推します。購入を希望する人が事前に希望額を伝えるとき、どの程度、さばを読むかも理論やデータを使えば推測できます」

「18年11月、同社の今井誠取締役とともに『オークション・ラボ』を立ち上げ、月に1回のペースでメカニズムデザインに関するワークショップを開いています。米国などに比べると日本ではなおメカニズムデザインは十分に活用されていません。自分たちの取り組みやアイデアを話し、関心がある人たちと交流したいと思ったのです。これまでに21回開催し、ビジネスパーソン、官僚、学者、僧侶など多様な人が参加しています。その模様を近著『メカニズムデザインで勝つ』で紹介しています」

――三省堂書店有楽町店は、マジョリティー・ジャッジメント(MJ)という投票方式で10冊の経済学書を対象に人気投票を実施しました。デューデリ&ディール社とともに運営に協力したそうですが、MJと経済理論とはどんな関係があるのですか。

「投票用紙をインプット、投票結果をアウトプットと考えると、投票の方式は関数の一種といえます。良い関数を考えれば、良い結果が出るのです」

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