「新しいことは外から」 人との交わり、社員に勧める三菱鉛筆 数原英一郎会長(上)

三菱鉛筆会長 数原英一郎氏
三菱鉛筆会長 数原英一郎氏

「uni(ユニ)」ブランドで知られる三菱鉛筆は130年以上の歴史を持つ筆記具メーカーだ。数原英一郎会長は社長時代、海外市場を積極的に開拓し、2019年12月期の売上高約620億円の4割強を海外が占める。海外展開を支えたのが、同社の高い技術力だ。数原会長は「技術者が自由な発想で話し合うことが大切」と仕組みづくりを重視するとともに、「仕事を自分の問題として捉えることが大切」と社員の主体性こそ大切と語る。

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――社員はどのように育てていますか。

「社員には『新しいことは外から来るよ』と話しています。新しい価値を創造するためには頭で考えるだけでなく、外からの刺激が大事です。新型コロナウイルスの感染拡大でリモート勤務が広がり、それがより鮮明になりました。テレビ会議システムを使えば事務処理や情報の伝達はできますが、新しい価値を創造するのは難しい。もちろん感染対策には十分気をつけることが前提ですが、知識やアイデアを思いつくために外に出て、人と接することが大事です」

「犬も歩けば棒に当たると言うように、イノベーションは人と人の交わりや偶然の出来事から起こります。万有引力を発見したニュートンも言い伝え通りなら、外を歩いていたからリンゴが落ちるのを見て、着想を得ることができました。社員には『人と交わるように』と日ごろから言っています」

――今につながるような成功体験はありますか。

「これが成功だったと、あまり思わないようにしています。リーダーにとっての成功体験は必ずしも良いことばかりではありません。リーダーが成功体験を得たと思うと自信過剰になってしまいますし、周りの人は意見が言いづらくなります。プロ野球の監督だった故野村克也氏がよく口にした『勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし』という言葉があります。成功するのは色々な偶然の要素もあるので、本当に正しいやり方だったから勝ったのか分からないです。その点、失敗はとても勉強になります。私も若い頃に社会的作法やルールを知らなくて、何度も恥をかきましたし、たくさん失敗しました。バブル崩壊の時は色々な人の失敗を見てきました。でも、やけどをすると次は熱いものに触らないように気をつけるように、失敗からは次回のとるべき方法を学ぶことができます」

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