日産社員も涙 木村拓哉で描くクルマ愛と新しい現実売れるCMキャラクター探偵団

日経クロストレンド

矢沢を引き継ぐ器を持つ男

「矢沢さんでのコミュニケーションを通じて日産車をお買い求めいただいた今のオーナー様に、納得いただけるほどの存在感があり、かつ、幅広い層からの認知・好意がある人は木村さん以外いなかった。これから時間がたつにつれ、日産のアンバサダーとしてのイメージをつくっていける」と、堤氏は視聴者が抱くであろう戸惑いを見越しつつも、絶大な信頼を持って木村を起用した背景を打ち明ける。

「幕開け編」での「上等じゃねえか、逆境なんて」というセリフは、矢沢の後を引き継ぐことのできる木村だからこそ伝えられるメッセージだという。

細田氏「木村さんだからこそ演出できる『不良性』が、今の日産のCMには生きる。国民的な存在である木村拓哉をやんちゃに描いていけば日産らしさが表現できると考え、このセリフを選びました」

堤氏「日産は今、国内でのシェアは10%程度。ある意味、全員に好かれようと優等生を選ぶ必要もないのです。いろいろな経験をされてきた木村さんだからこそ、『逆境も上等』というセリフを説得力をもって伝えられたと思います」

細田氏「日産の自動運転車を、まだ自分のための技術と感じられていないお客様も多かったんです。だからこそ進んだ技術ほど『今ここにあるのだ』と描いてきました。木村さんならば一歩進んだものを、国民ごととして共感をもって伝えられると考えました」

第2弾CM「ハマっちゃう編」では、葉山の別荘をイメージした室内にあるアリアを軽快なリモコン操作とムーンウォークで操り、両手を放しながらさっそうと走り抜ける。居室内に自動車があること、リモコン一つで車が動くこと、そして華麗な足さばきに目がくぎ付けとなる。

細田氏「アリアが当たり前のようにある生活は、未来ではなくもう間もなく現実となるでしょう。まだファンタジーな世界観だけれど、今の延長線上にこんな、つい指を鳴らしてしまうような生活があり得ると、リアリティーを持って伝えたかったんです。両手を放してサングラスをかけることで、自動運転を分かりやすく表現しました。木村さんは今と未来の懸け橋的な存在です。今描いている日産がこれからの日産だと伝えたかった。

葉山の別荘というのも、今後は二拠点生活が当たり前になっていくかもしれないと。それこそ、生活空間に車が共存していてもおかしくない。これからは車にまつわるかっこいいという概念が変わっていくと思います」

新アンバサダー効果はすさまじい。動画再生数はオーガニック再生で60万回を超え、日産では最多。アリアの資料請求数は、ハマっちゃう編の放映日以降、1日当たりの登録者数が10倍に跳ね上がった。

細田氏「これまでのキャンペーンでは話題になってもすぐに下火になっていたのが、木村さんのCMに対する反響は、ずっとコンスタントに続いているのも特徴です。話題性の大きさを実感します。アリアという車への興味に話題がきちんとシフトしているのもうれしい誤算です」

堤氏「動画のコメント欄には、これまで明らかになかった若い方や女性からのメッセージが書き込まれていて、想定していたターゲット層に刺さっていると感じます」

10月23日まで限定で建てられた体験型施設「ニッサン パビリオン」(横浜市みなとみらい)では、アリアなど日産車の魅力を様々なコンテンツで体感できた
ニッサン パビリオン内のアリアの前で

「日産というブランドを好きになってくれる人を増やしたい」と、ブランディングの命題を語る堤氏。一度傷ついた信頼を回復するのはたやすいことではないが、木村拓哉という国民的タレントを新アンバサダーに迎えたからには、もう一歩も後戻りはできない。その強力なキャラクターを持ってすれば、1人でも多くの顧客が自信を持って日産車を選ぶ日は、そう遠くないかもしれない。

(ライター 北川聖恵、写真 武田光司)

[日経クロストレンド 2020年10月16日の記事を再構成]

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