横浜創英中学・高校 工藤校長

この個別最適化学習のスタイルだと、教室内のそこかしこから声が聞こえてきて「カオス」のような状況になります。

ただ効果はてきめんでした。中学1年間の数学の授業時間は計140時間あるのですが、数学が比較的苦手だという生徒でも約70時間で1年の授業範囲を終了。成績上位の生徒は5分の1程度の時間で終わり、なかには中1で中3や高1の単元まで進んだ生徒も出ました。その効率性には驚きましたが、何よりこのスタイルの学びの良いところは、生徒の「学ぶ意欲」「学び方」が養われていくからです。

従来の一斉授業型の学びとあえて比較した言い方をすれば、教育でもっとも大切である「主体性」「自律性」が失われないのです。

日本の教育関係者は、分かる授業をすべて子供たちに提供したいと必死でがんばってきました。生徒も保護者も教え方の上手な先生を支持してきたからです。結果、授業のうまい先生がスターのように扱われ、他の先生たちはその先生に見習おうと努力してきたのです。しかし、それをがんばれば、がんばるだけ、教育界は負のスパイラルに入っていくと思います。

ベテラン先生やカリスマ講師のもとで学ばせたいと考える親が多いようですが、そういった方々にお伝えしたいのは、子供たちはもっと教え方のうまい先生を求めるようになるだけで、主体的に自分で考えて行動しようとは思わなくなっていくということです。「あの先生の教え方が下手だったから、自分は成績が下がり、志望する学校に落ちた」とか、人のせいにばかりする人間になってしまいます。これでは「自律した大人」には育ちません。

4月から校長を務めている横浜市の中高一貫の私立校、横浜創英中学・高校では、まだまだ基本的な教育スタイルは一斉授業型ですが、今後は生徒や先生方と一緒になって、どんな学習法がそれぞれの生徒にとっていい方法なのかを考えていきたいと思います。教育は教員だけでやる時代でもありません。福本さん率いるスペースをはじめ、多くの民間企業の知恵や協力も借りて今後のあるべき教育の姿を追求していくつもりです。

工藤勇一(くどう・ゆういち)
1960年、山形県生まれ。東京理科大学理学部卒。1984年から山形県の公立中学校で教えた後、1989年から東京都の公立中学校で教鞭をとる。東京都教育委員会などを経て、2014年から千代田区立麹町中学校の校長に就任。宿題や定期テスト、学級担任制などを次々廃止するなど独自の改革を推進。2020年4月から現職。
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