タイ発ボーイズラブドラマが人気 偽装彼氏から恋愛へ
日本でSNSを中心に大きな話題を呼んでいるタイのBL(ボーイズラブ)ドラマ『2gether(トゥギャザー)』の配信が、7月31日、Rakuten TVで始まった。『2gether』は、2月から5月までタイの放送局「GMMTV」が放送した作品で、YouTube全話総再生回数は2億3000万超。日本では、あるツイッターの投稿をきっかけに、4月頃からコアなタイBLファン以外にまで人気が広がっていった。
同作は、GMMTVの公式YouTubeチャンネルやLINE TVで無料配信され、その動画にファン有志が無償で字幕を付け、日本語でも見られた。字幕表示の言語の数は約30にも及び、世界各国にファンが広がっていることをうかがわせた。日本では折しも新型コロナウイルスの緊急事態宣言下。無料で見られる新しいコンテンツに人々は鋭く反応し、以後、新たなエピソードが配信されるたびにツイッターのトレンド入りするほどの盛り上がりを見せていった。
「そもそも近年、BL作品は注目を集めているジャンルでした」と話すのは、『2gether』の日本配給権を獲得したコンテンツセブン。同社では、韓国・中国・台湾を中心にアジアの映像作品を扱い、その中にはBL作品も含まれている。日本でアジアBL作品の手応えを感じたのは、2018年のドラマ『おっさんずラブ』以降だという。「それ以前はBL好きを公言しにくい雰囲気もありましたが、『おっさんずラブ』で、BLが"1つのラブストーリーとしてみんなで一緒に楽しめるコンテンツ"に変わったように感じます」(コンテンツセブン、以下同)。
ほぼ時を同じくして、タイでは16年放送の『SOTUS/ソータス』の大ヒットを皮切りに、BLドラマが次々に作られ、国を越えて話題になっていた。その中でも、『2gether』はすでに放送前から、タイをはじめ世界中のBLファンの期待を集めていた作品だったという。「放送前のティザーを見て、すぐ本格的な配給権獲得に乗り出しました」
『おっさんずラブ』と多くの共通点
コンテンツセブンは作品の魅力について、「最初に目を引いたのは主人公たちのスター性のあるビジュアル。日本でも絶対に人気が出ると確信しました。さらに脚本も良く作られていて、伏線が張り巡らせてある。リピートしたくなる面白さがあります」と話す。
ドラマでは同級生の男子学生のアプローチをかわすべく、イケメン同級生に「偽装彼氏」役を依頼したことをきっかけに、2人が本当の恋愛関係へ発展する。自然に同性を好きになり、周囲もそれを当たり前のように受け入れる世界観や、テンポ良く、時にコミカルに展開するストーリーなど、『おっさんずラブ』と共通する点も多い。BLビギナーにとってハードルが高くなかったことも人気拡大に拍車をかけたと考えられる。ファンの世代は、10代から中高年に至るまで幅広い。
前述の『SOTUS』をはじめ、『2gether』をきっかけに旧作にも改めて注目が集まっている。アジアBL作品のラインアップに力を入れるRakuten TVによると、その視聴者数は順調に伸びているという。同サービスでは、『2gether』に続き、19年にタイで放送し、SNSでも話題の『TharnType/ターン×タイプ』の独占先行配信も8月28日から始まった。タイBLの熱はしばらく続きそうだ。
(ライター 横田直子)
[日経エンタテインメント! 2020年9月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。