ミスマッチは起こる 半年で会社辞めた先輩からの助言通年採用時代の就活のトリセツ(9)

2020/10/26
HRラボを創業した塚田亜弓さん=HRラボ提供
HRラボを創業した塚田亜弓さん=HRラボ提供

こんにちは、法政大学キャリアデザイン学部教授の田中研之輔です。過ごしやすい季節になり、今年も内定式がおわりましたね。昨年までとの違いは、多くの企業で内定式がオンラインで実施されたこと。これもウィズコロナを生きるニューノーマル(新常態)ですね。

内定式に参加したゼミ生には、次のことを伝えています。

「入社後の働き方を具体的に見据えて、残りの大学生活を過ごすように」と。

内定式の翌日から、私は4年生とのコミュニケーションを意識的に変えています。具体的には、大学生への教育支援の立場ではなく、社会人としてキャリア形成を念頭に置いて接するようにします。よりわかりやすく表現するなら、学生と教員の関係ではなく、社会人の同僚としてフィードバックをするように心がけています。

「遅刻や無断欠席」、さらにリポートや課題の提出期限を守らないといった、大学生としては、なんとなく許されてきた「ぬるい慣習」は、社会では通用しません。先日も、現在取り組んでいる卒業論文の第一次締め切りを守らなかったゼミ生には、認識の甘さを見直すように伝えました。

当たり前のことを丁寧にやる。これが社会人の基礎作法です。もちろん、そのようなことは大学1年生の時から伝えています。しかし、本人が「その気になる」タイミングが内定式直後なのです。大学生気分のままではまずいな、社会人としてしっかり働いていけるように力をつけていこうと自覚するのが、この時期なのです。

内定式後に考えたいこと

さらに、キャリア論の専門家としてもう一歩踏み込んでアドバイスをしています。それは、内定式後から入社後のミスマッチについても考えてもらうようにしているのです。

なぜか? 内定式は企業の入り口に過ぎません。内定式とはいえ、みんなはまだお客様扱いです。企業のいいところばかりが見えているはずです。実際に、働いてみないと職場のリアルはわからないのです。

しかし、皆さんが大学の講義で一度は耳にしたことを思い出しておきましょう。「新卒の3割が、入社3年以内に会社を辞めている」という早期退職の実態についてです。景気によって多少の振れ幅はありますが、昔から変わらない傾向です。私はゼミ生に、早期退職は決して他人事ではないということを伝えています。

そこで今回は、実際に早期退職をして、そのときの経験を生かして、現在はキャリア開発支援に従事している塚田亜弓さんにインタビューをしました。塚田さんのリアルな早期離職経験の話から、自分事としてイメージて考えてもらいたいと思います。

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――どんな大学生だったのですか?

フツーの学生です。どこにでもいるような。私は比較的決められたレールの上を無意識に走ってきたタイプ。学校の進路選択、就職先の選択においても、自らの強い意思があったわけではないのです。周りに流れされていたわけではないのですが、なんとなくダメージの少ない道を選んできたように思います。キャリアを選択するときには、いつも迷っていました。そのたびに納得のいく決断ができなかったように感じています。

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