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前回、理化学研究所「坂井星・惑星形成研究室」の坂井南美さんの研究史を見ていたところ、ちょっと興味深いことに気づいた。坂井さんは、これまで女性がとても少ないことで知られている物理学科出身だ。学部もそうだし、大学院生・助教時代を過ごした研究室もそうだ。
また、坂井さんと同じジャンルの研究を検索していくと、ごく自然に同じ研究室(東大大学院・物理学専攻の山本智研究室)の2人の女性研究者の名前がヒットして、それぞれ、特筆すべき活躍をしていることも前回見た。
科学研究それ自体には性別は関係ないはずだけれど、理学系、工学系の研究者には、女性はとても少ない。さらにいえば、数物系、と呼ばれる、科学としてもコアな部分は、特に少ない。でも、今、物理学の世界は変わりつつあるのだろう。
と同時に、どうしたら、このような状態になりうるのか関心があり、坂井さんに聞いてみた。今の、理学系、工学系の研究の現場は、いくらなんでも女性が少なすぎて、「何かがおかしい」と思うことしきりだからだ。実は、本シリーズで登場していただく研究者も、男女比が大いに偏っていて、ぼくは居心地がよくない。
「いや、日本の理学系の研究者って、本当に今も女性が少ないですよ」と坂井さんはかなり実感を込めて語った。
「この分野で私がオランダの研究所にセミナーをしに行ったとき、参加者が9割女性で、目が点になりました。みんな研究者ですよ。30代ぐらいの方が多かったと思います。もちろん、天文学って、物理学に比べると女性が多い傾向はありますし、私の研究は化学に寄っていて、化学も少し女性が多いです。でも、日本の場合、せいぜい1%が5%になる程度です。そのセミナーでの9割というのはたまたまだったかもしれないけれど、ヨーロッパでは若い世代は半々くらいにはなっていて、ドイツだけが、日本と同じかなあという印象ですね」
はたしてこの違いは何なのか。研究者の男女の割合が半々くらいにはなっているヨーロッパの国々の事例と、1割にも満たない日本やドイツの事例が理解を助けてくれるかもしれない。
「ひとつ思ったのは、オランダのその研究所はボスが女性なんです。やっぱり、今の時点では、女性は女性がいる研究室を何となく選ぶ傾向にあると思うんですよね。女性がやっていきやすそうな場所だと確信を持てますから。それを考えると、日本もドイツも、ボスはほとんど男性ですよね。だから、結果として、女性がいるところに女性が集まってくるみたいなことが起きているのかなと思います」