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東大寺学園高校1年の国語の授業

東大寺学園高校1年の国語の授業

東京大学や京都大学に毎年、多数の合格者を輩出する東大寺学園中・高等学校(奈良市)。生徒たちの高い学力を支えているのは、型にとらわれない自由な校風と授業風景にあるようだ。教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏が訪ねた。

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生徒だけでなく教員も自由の体現者

東大寺学園中・高等学校は、奈良の大仏で有名な東大寺を経営母体とする男子校。東大・京大・国公立大医学部の合計合格者数では全国で5本の指に入る超進学校だ。一方で、校風は底抜けに自由で、制服もなければ校則もない。

自由なのは生徒たちだけではない。教員たちの自由も最大限に守られ、授業内容に関する裁量の幅は大きい。それぞれの教員がそれぞれのキャラを最大限に生かして、独特な授業を行う。そのバラバラ具合が東大寺学園の校風をよく表している。

一例として、藤嶽彰康先生の高1の国語の授業を見学させてもらった。東大寺学園出身ではないものの、新卒で勤務して30年以上のベテランだ。

「普通の授業」は絶対しない

昼休みが終わり、ざわつく午後の教室に、藤嶽先生がやってくる。すると生徒たちは、まるでジャングルに暮らすサルの群れのように、口々に甲高い奇声を発する。どうやら藤嶽先生の独特な笑い声のまねらしい。起立も礼もなく、ざわついたままでなんとなく授業が始まる。

藤嶽先生 「きょうから教科書行きます!」
 生徒たち 「うそやん!」

現代文の授業であるが、前回の授業までは新型コロナウイルス拡大防止のため長期にわたった休校期間中の学習のばらつきを調整する目的で、イレギュラーな授業を行っていたようだ。内容は企業秘密である。

板書を始めるとすかさず「先生、字、きたない。きれいに書く努力しろ」とツッコミが入る。藤嶽先生も「はーい」と応じる。このように、生徒たちはざわざわガタガタしながらも先生の一挙手一投足に注目し、いちいちツッコミを入れ、先生もいちいちそれを拾う。高度な偶発性のなかで授業が進行するスタイルだ。

この日読むのは鷲田清一氏の「<わたし>のいる場所」という文章。藤嶽先生は鷲田氏という哲学者の文章の特徴について、そしてどのようにこの文章を読んでいくのかについて説明する。その途中、いちいち生徒たちから合いの手やらツッコミが入る。一人の生徒が「漢字!漢字!」とうるさい。

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