「ざんねんないきもの事典」 生んだ編集者の生き物愛高橋書店 山下利奈一般書第1係主任(上)

最新刊の第5弾も手掛けた高橋書店の山下利奈一般書第1係主任

高橋書店の「ざんねんないきもの事典」シリーズが第5弾までの累計で420万部を超えた。テレビ東京系での実写ドラマ化も決まった。手帳のイメージが強かった老舗出版社から異例のヒット作が生まれたのは、編集者たちの「いきものはそれぞれにいとおしい」という思いからだった。

「手帳は高橋」のキャッチフレーズで知られる。企業が社員向け手帳を配布していたころから、個人向けビジネス手帳を販売していて、同社製手帳の愛用者は多い。出版部門を独立させた形で出版社として創業したのは1954年で、早くから手帳や家計簿といった実用的な商品で強みを発揮した。2002年からは「手帳は高橋」のキャッチフレーズでテレビCMを開始。手帳のイメージを一段と強めた。「ざんねんないきもの事典」の第1弾が刊行されたのは、それから14年後の16年。手帳よりもはるかに遅れてのデビューだった。

「手帳は高橋」のイメージからすると、生き物事典の「ざんねん~」は意外感が強い。しかし、実は「以前から児童書を手掛けていて、生き物の図鑑も刊行してきた」と、同シリーズを担当してきた、書籍事業部編集部の山下利奈一般書第1係主任は明かす。一般的な生き物図鑑はそれぞれの特徴を説明し、個性を際立たせる形式が多い。「生き物はそれぞれにすごいという構成が王道。当社の図鑑も同様の手法で、生き物のすごさを紹介してきた」。背が高いキリン、足の速いチーターのような、強みやナンバーワン要素に光を当てる格好だ。

しかし、取材や編集を担当するメンバーは、実際の生き物たちにはすごい部分と同じぐらい「どうしてこうなった?」と、思わずつっこみたくなるような一面があることに気づいた。たとえば「電気ウナギは自分も感電してしまう」といった、やや間抜けな生態だ。こういった「すごくない持ち味」は、これまでの図鑑編集では切り捨てられてきた。「電気ウナギの発電量は~ボルトにも達する」といった、イメージ的に優位な情報が選ばれてきたからだ。

1冊あたり100項目以上の「ざんねんポイント」を盛り込んでいる

生き物は常に有益な能力を得る方向でのみ直線的に進化してきたわけではない。環境に応じて姿形を変えたり、特殊な能力を備えたりするが、時には変化が過剰になったり、思わぬ結果を招いたりしがちだ。編集者たちはそこに「ざんねん」という魅力を見いだした。「ベースにあるのは、生き物をいとおしいと感じる気持ち。強いから、美しいからだけではなく、みんな思い思いに頑張っている姿を、もっと様々な角度から知ってもらいたかった」と、山下氏は企画の意図を説明する。

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