日経ナショナル ジオグラフィック社

2020/10/12

世界を回復に導くには

年次報告書が言及しているのは過去6カ月の劇的な状況悪化だけではない。今後数年にわたり、パンデミックは複数の主要部門に影響を及ぼし続けると予測している。ただし調査においては、パンデミックで生じた実務上の問題によって、データ収集そのものに制約が生じたことを研究チームは認めている。そのため、これらの影響を埋め合わせるため、今回は2通りの未来予測シナリオが用意された。

楽観的なシナリオでは、COVID-19が短期間で根絶できると仮定している。その場合のデータモデルは、わずか2年ほどでSDGs達成の軌道に戻ることができると予測している。一方、迅速な封じ込めは不可能だと仮定した最悪のシナリオでは、目標に向けて再び前進し始めるまでに10年以上かかる可能性もあると予測している。

どちらの未来が現実になるかは、企業や国が今後数カ月に何をするかによっておおむね決まるとゲイツ氏は話す。ゲイツ氏はまた、これほど複雑に絡み合う問題を解決するには、世界的な協力体制が不可欠だと訴えている。

ワクチンの製造は協力可能な分野の一つだ。ゲイツ氏は、21年前半までにワクチンが開発されると楽観的に予想しているが、世界規模でパンデミックと闘うために必要な量を製造できるかどうかについては疑問視している。ゲイツ氏はこのジレンマの解決策として、ごく少数の富裕国に集中するワクチン開発企業が、製造能力の高い世界中のメーカーと手を組むことを提案している。

多くの命を救い、しかも不公平が生じないようワクチンを配布するには、各国がどのように協力し合えばいいかという問題もある。例えばゲイツ氏が指摘するように、米国は6種のワクチンの研究開発を支援している点では評価すべきだが、そのワクチンを他国が購入する支援については、話し合いにすら参加していない。トランプ政権は9月に入り、世界保健機関(WHO)などが主導する、ワクチンを複数の国で共同購入する枠組みに参加しない方針を明らかにした。

ワクチンの配布が、開発資金を出した国に多少傾くことはゲイツ氏も受け入れている。だがそのうえで、富裕国は公平なワクチン配布に力を注ぐべきだと氏は主張している。世界のどこかにCOVID-19が存在する限り、世界中でパンデミックの影響は終わらないからだ。

「発展途上国を支援するのは、人道的、戦略的な理由からだけではありません」とゲイツ氏は言う。「そうすれば通常の生活に戻ることができるという、利己的な理由もあります」

(文 OLIVER WHANG、訳 米井香織、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年9月19日付]

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