横行する10代少女の人身売買 インド・バングラの闇

日経ナショナル ジオグラフィック社

2020/10/4
ナショナルジオグラフィック日本版

貧困がはびこるインド、西ベンガル州の南24パルガナ県で、いとこと一緒に列車を待つ18歳のM(右)。Mは学校で出会った男にだまされてデリーの売春宿に売られたが、なんとか父親に電話をかけ、NPOの協力を得て警察に救出された(PHOTOGRAPH BY SMITA SHARMA)

性的搾取を目的とする人身売買は世界的な問題で、何百万人という子どもたちが被害に遭っているという。ナショナル ジオグラフィック10月号では、拉致されたり、だまされたりして、売春を強要される児童売買の現状をリポートしている。

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人間社会にはびこる悪行のなかで、子どもに売春を強いることほど、忌まわしいものはない。正確に数字を把握することはできないが、未成年者の性的搾取を目的とした人身売買が世界中で横行し、数千億円規模の産業になっていることは間違いない。

この問題でよく引用される国際労働機関の調査によると、2016年に性的搾取の犠牲になった子どもは100万人を超えているという。児童売春の実態把握が困難なことから、実際の数はもっと多いとも言及されている。国連薬物犯罪事務所が出した世界の人身売買に関する報告書の最新版では、各国が報告した人身売買の被害者の数は、10年は1万5000人未満だったが、16年は約2万5000人近くまで増えている。

だが、これらの数字は氷山の一角にすぎず、被害のほとんどは表面化していないと考えられる。被害者が増加したのは、取り締まりの強化が関係しているかもしれないが、研究者は背景にある冷酷な現実を指摘する。売春目的の子どもの売買を含め、人身売買は確実に増えているのだ。

米ジョージ・メイソン大学で公共政策を専門とするルイーズ・シェリー教授は、「まさに成長産業です」と話す。

こうした子どもの人身売買と無縁の国は、事実上皆無といっていいが、特にいくつかの地域がこの忌まわしい行為の中心として浮上しつつある。サエダとアンジャリが育ったインドの西ベンガル州と隣国のバングラデシュだ。この二つの地域は2250キロの国境線で隔てられているが、共通の文化や言語で結びついていて、毎年何千人という少女が売られ、性的奴隷にされている点でも共通している。

完全ではないものの、報告されている数字や推計から取引規模の大きさがうかがえる。インドの国家犯罪記録局によると、2010~16年に国内で報告された人身売買3万4908件のうち、西ベンガル州での取引が4分の1近くを占めていた。人口が国全体の約7%でしかない同州にしては、あまりにも割合が大きい。西ベンガル州で行方不明になった子どもの数は、17年だけで8178人。これはインド全体の8分の1近くになる。かなりの数の少女が売春宿に売られると見て間違いないだろう。

さらにひどいのがバングラデシュだ。政府の推定では、毎年5万人の少女が、インドや、インドを経由して他国に売られている。その上この数字には、バングラデシュ国内で売られ、売春を強いられる少女たちの数は含まれていない。

西ベンガル州には、売春目的で売買される少女たちが、州の外からも多く集められてくる。バングラデシュとの長い国境線に加え、ネパールとも96キロにわたって接しているため、国境警備が手薄な場所がたくさんある。

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