ディスプレーに映っているのが武藤千明主任。オンラインで取材に参加してもらった

全員参加の経験が役立った

白河 コロナショックを受けてテレワークに急に移行しようとした企業が直面した壁の一つが、通信環境の問題でした。御社の場合は、準備が先行していた分、混乱は起きなかったのですね。自宅にWi-Fi環境がない方や業務用プリンターが必要になる方への補助はあるのでしょうか?

杉本 自宅でWi-Fiが整備されていない等、ネットワーク環境が十分でない方には個別対応でルーターを貸し出しています。プリンターやモニターに関しても、業務上必要になる場合には上長の承認があれば会社負担で支給するようにしています。

白河 非常に本気度を感じる改革ですね。世の中を見渡すと「緊急事態宣言解除と同時に、出社する働き方に戻ってしまった」という嘆きも多く聞かれる中、これほど在宅勤務が浸透し、速やかな変化を起こせた秘訣は何なのでしょうか。

杉本 やはり、「一度全員が経験していた」という予行演習の効果は大きかったと思います。「ワークスタイルトランスフォーメーション2019(通称ワクトラ)」の名称で昨年に行った施策は、役員も含めて全社員が1カ月半の期間中に必ず3回以上テレワークを実施することや、特定の日には各組織の50%以上の社員がテレワークを実施することを半ば強制するというものでした。予行演習を通じて「とにかく一度はやってみた」という体験を全員が持ち、課題や気づきを社内で共有できていたことは、非常に生きたと感じています。

白河 予行演習があったんですね。いきなり本格導入するのは無理ですよね。特にテレワークは「食わず嫌い」の人が多いので、「やってみたら、なんとかなった」という経験を組織内の全員が共有できることが重要だと聞きます。「上司が出社するから、出社しないといけない」と、徐々に出社が増える状況はないですか。

杉本 ないですね。むしろ上司のほうが積極的に在宅勤務をしようとしているのではないかと思います。例えば私のチームでは、週の終わりに翌週の予定をチェックして、出社の必要がある業務がないかを確認しています。すると、「その業務、出社しなくてもできるんじゃない?」とか「そもそもその業務、今やるべきだろうか」と棚卸しができるんです。結果的に、チームの業務効率化につながっていると思います。

白河 テレワーク推進の一番のメリットは業務の効率化が進んで無駄がそぎ落とされることだと私は思います。そして御社の場合は、予行演習を上層部の方も一緒になって経験した点がポイントと言えそうですね。今は役員会もテレワークでなさっているのですか。

杉本 はい。取締役会は、最近まですべてオンラインで開催していました。現在は、感染防止対策をしたうえで、会議室での開催としていますが、オンラインからでも出席できるようにWeb会議システムも併用しています。また、経営会議もすべてオンライン上で行っています。コロナ前からペーパーレス化を進めていましたので移行はスムーズでした。

白河 昨年の「ワクトラ」での検証も含め、テレワーク導入による効果や課題については傾向が見えてきていますか。

武藤 「ワクトラ」の実施後、そして今回の原則在宅勤務移行後にもアンケートを実施して効果検証を進めています。まず、「ワクトラ」実施による効果としては、意識面での変化が見られました。「組織内でのテレワークに対する理解が進んだ」「テレワークを実施しやすい職場ムードが醸成された」という回答は6割に上りました。