子育ての想定外が道開く 流れ着いた先が最高の場所にジェンダー・国際協力専門家 大崎麻子さん

2020/9/19

家は「子どもが安心できる場所」

シングルマザーとして就職することも考えましたが、どの会社も長時間労働で子育てと両立できません。生活環境が大きく変化しただけに、子どもとの時間を最優先にしようと思いました。シングルマザーになれば社会からは厳しい目で見られると思い込んでいましたが、杞憂(きゆう)でした。国連の同僚に離婚を報告すると「おめでとう。これでやっと自由で独立した女性になったわね」と祝福される始末。実際に、全て自分1人でやると覚悟を決めたら、ストレスからも解放されました。相手に期待するからストレスになるのです。日本に戻って息子はインターナショナルスクールに、娘は日本の幼稚園に入りました。

NYで暮らしていたとき、息子は夏休みになると私の実家に行って日本の小学校に通っていました。小さいときにはなじんでいたのですが、4年生の時に違和感を覚えたようです。サッカーで友達ともめ、殴られたことがありました。本人いわく、同級生がなぐるのは仕方ない。でもそのときに先生がきちんと指導せず、「だめだぞー」とにやにや笑いながら言った姿に不信感を抱いたそうです。日本の先生は信用できないと。米国の学校では暴力は絶対に許されません。殴った生徒も親も校長室に呼ばれて処分を受けます。そんな経験もあり、子どもが希望する学校を選びました。

子どもにとって家は「安心で安全な場所」であってほしいものです。一緒にごはんを食べ、たわいもないおしゃべりをし、ゆっくりくつろぐ。それでいいのです。家が緊張感のある場であってはいけないと思い、子どもにとって安心できる家づくりを心がけました。ただ、その決断ができたのはNY時代に夢中で働き、経済的な蓄えがあったからです。母が常々話していた「女性が経済的に自立することの大切さ」を改めて感じます。

帰国後は、毎年必ず実家の近くの江島神社に3人で初詣に行く(2020年1月、本人提供)

今年は年初に受けた人間ドックで初めて引っかかりました。しかも4つも。大事には至りませんでしたが、その後、新型コロナウイルスの感染拡大で家にいることが多くなり、娘とウオーキングをしたり、オンラインのパーソナルトレーニングを一緒に受けたりしながら自分の生活を見つめ直しました。子どももそれまでは部活や勉強に忙しかったので、こんなに一緒の時間を過ごしたのは久しぶりです。

振り返れば、流れ流れてここまで来た私の人生です。だから我が家の家訓は「流れ着いた先が最高の場所」。夫とは別れましたが、彼と結婚するために大学院に進学し、息子を妊娠して人権問題に興味を持つようになりました。離婚したことで子どもとの時間を最優先に考え、フリーの専門家としてキャリアを積んできました。目標をもって進むことも大切ですが、その場その場で一生懸命努力すれば新しい道が開けると感じています。息子も希望していた米国の大学には進学できませんでしたが、日本の大学に通ったから英国に留学し、そこで築いたネットワークがいかされて今は気候変動やサステナビリティーに関する仕事をしています。高校3年生の娘は受験勉強中ですが、兄のアドバイスもあり、幅広く物事を学べるリベラルアーツを専攻しようと考えているようです。自分の興味のある分野に進み、互いに助け合えるような人間関係を築いてほしいと思っています。

(聞き手は女性面編集長 中村奈都子)

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