2020/9/25

全体的な数字は有望に見えるものの、この初期の試験は小規模なものであり、薬の効果がどの程度のものかについてはまだよくわかっていない。ホルゲート氏によると、シネアジェンは今秋、英国でより大規模な臨床試験の協力者を募っているという。一方で、インターフェロンの使用はタイミングに依存するという別の研究もある。これによると、投与が遅すぎる場合、効果が低いか、あるいは末期の患者では炎症を増幅させることもあるという。

改善される標準的な治療法

COVID-19への対処に希望を与えてくれるのは、優秀な薬だけではない。それと同じくらい重要なのは、マスク、ソーシャルディスタンス、手洗いなどの基本的な予防法であり、また標準的な治療の改善だ。

この夏、COVID-19が再び増えた際、この病気に対する医師たちの理解が深まっていたことが、米国での死者数の減少に寄与したことはほぼ確実だろう。6月30日付で学術誌「Anaesthesia」に発表された論文でも、おそらくCOVID-19にうまく対処できるようになるおかげで、集中治療室の患者の死亡率が次第に下がっているとすでに指摘されていた。

たとえば、侵襲的な人工呼吸が挙げられる。人工呼吸は多くのCOVID-19患者を救ってきたが、リスクがないわけではない。呼吸による圧迫は肺に損傷を与える可能性があり、また気管内に挿管する不快感や不安から、心的外傷後ストレス障害の症状が引き起こされる場合もある。そのため研究者らは、挿管による損傷や苦痛を最小限に抑え、患者の呼吸や血中酸素濃度を改善する、より侵襲性の低い方法を模索してきた。

「よくある間違いは、難しく見える方法ばかりを喜んで採用し、効果があるとよくわかっているものをおろそかにしてしまうことです」と語るのは、米アリゾナ大学の研究者で、ICU医療部長のクリスチャン・バイム氏だ。

急性呼吸窮迫症候群(ARDS)と呼ばれる、よく知られた症状がある。重症のCOVID-19患者もこの症状を示すことがある。バイム氏らは、ARDSに用いられる肺保護換気という技術を、COVID-19患者に用いて良好な結果を得ている。これは人工呼吸器の設定を調整して、肺に送り込まれる空気の圧力と量を制限し、さらなる圧迫による負荷を防ぐというものだ。

バイム氏はまた、もう一つ、驚くほど効果のある簡単なテクニックが存在すると指摘する。それはCOVID-19の患者をうつぶせに寝かせることだ。「これはCOVID-19患者全般に対して、非常に有効であることがわかっています」

おなかを下にして寝ることは、血液中に酸素を取り込む肺の能力を高める。心臓は胸の前寄りにあるため、仰向けになっている人をうつぶせにすれば、肺にかかっている心臓の重量を取り除ける。また、肺の後部には、前部よりも血流とガス交換室の数が多く、うつぶせで寝れば、ガス交換室が圧迫されにくく、効率もよい。

人手の面から言えば、患者をうつぶせにすることはそう簡単でない場合もある。点滴や人工呼吸器につながれている患者の体を安全にひっくり返すには、5人の手が必要になるだろう。しかし、世界各地での複数の症例研究や調査からは、酸素補給との組み合わせにより、うつぶせ寝は意識のある軽症患者の血中酸素濃度も改善させることがわかっている。さらには、この方法は侵襲的な人工呼吸器が必要になるリスクも下げる可能性があるという。

「これは魔法の治療法というわけではありません。それでも、うつぶせ寝に対しては驚くほど多くの患者が反応を示します。しかも多くの場合、かなり急速な反応が見られるのです」と、米イリノイ州シカゴのクック郡保健局で救急医療主任を務めるケビン・マクガーク氏は言う。「意識のある人に、おなかを下にして寝てくださいと頼むのは、そう難しいことではありませんしね」

(文 MICHAEL GRESHKO、訳 北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年9月2日付

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