
私たちは子どもの頃から、ある疑問につきまとわれている。落とした食べ物は、はたして食べても安全なのだろうか?
答えのひとつに、素早く拾えば大丈夫というものがある。いわゆる「3秒ルール」(米国では「5秒ルール」と呼ばれている)だ。よく似たルールは世界中にある。
それだけに、こうしたルールにさしたる根拠があるとは思えず、世界各地の家族の論争や科学展でもおなじみのテーマになっているが、2500回以上も科学的に測定を行った興味深い実験の結果があるので紹介しよう。
米ラトガーズ大学の食品科学者ドナルド・シャフナー氏らが、2016年に学術誌「Applied and Environmental Microbiology」に発表した論文によれば、食べ物が細菌だらけの地面に置かれている時間が長いほど、多くの細菌が付着することは間違いなかった。しかし、地面に落ちてすぐの時点で、食べ物にはすでに大量の細菌が付着したという。したがって、3秒であれ5秒であれ、ルールとしては誤りであることを示唆している。
むしろ問題は、時間ではなく水分だった。水分のある食品(実験で使われたのはスイカ)は、パンやグミのような乾いた食品よりも多くの細菌が付着した。
また、タイルやステンレスに比べると、じゅうたんの方が細菌の伝播(でんぱ)は少なかった。これは、実験のために細菌が含まれる液体を塗布したところ、じゅうたんが細菌ごと液体を吸い込んだためだ。
このような条件とは無縁の3秒ルールは、つまり、かなり直感的なものだ。それではシャフナー氏らはなぜ、細菌の伝播率を2500回以上も測定する手の込んだ実験を行ったのだろう?
第一に、これまで行われてきた多くの検証が間違ったやり方で行われていると、シャフナー氏は話す。彼は、自身の生徒ロビン・ミランダ氏とともにこの実験を行った。アマチュアによる科学研究やテレビ番組の「調査」は、科学的な審査を通過していない実験に基づいており、その結果、混乱を招いているというのだ。