あおり運転から守る ドライブレコーダー選ぶポイント
高速道路を走っていたら、バックミラーに入りきらないほどぴったりと車間距離を詰められた。突然目の前に割り込まれ、急ブレーキをかけられた――。最近、テレビでいわゆる「あおり運転」の様子を目にする機会が増えている。映像は、クルマに設置されたドライブレコーダーで撮影されたもの。あおり運転の社会問題化に伴い、運転の様子を映像で記録するドライブレコーダーが注目を浴びている。
あおり運転を取り締まる「妨害運転罪」が新設
2020年6月30日、あおり運転を取り締まる「妨害運転罪」が盛り込まれた改正道路交通法が施行された。今回の改正により、急ブレーキ禁止違反や車間距離不保持といった妨害運転が厳正な取り締まりの対象となり、免許取り消しや懲役といった罰則が設けられた。
「あおり運転を映像に残すためには、前方だけでなく後方も映せるドライブレコーダーを選ぶ必要があります」とカー用品大手のオートバックスを運営するオートバックスセブンIR・広報部の鈴木政和氏は強調する。あおり運転は、後ろから車間距離を詰められるケースが多く、正面だけを映すタイプのドライブレコーダーでは肝心の場面が映らないのだ。
「前後2カメラ型」か「360度カメラ型」か
あおり運転に対応するドライブレコーダーの種類として、鈴木氏は「前後2カメラ型」「360度カメラ型」の2つのタイプを挙げた。「前後2カメラ型」は、前方、後方にそれぞれ1つずつカメラを設置する、あおり運転対応ドライブレコーダーの主流となっているタイプ。最近はフルHDの解像度を備えていたり、夜間でも明るく撮影できたりとリアカメラの性能も向上しており、車間距離を詰めてきたクルマのナンバーをしっかりと記録してくれる。
「360度カメラ型」は、 1台で前後左右360度を撮影できるのが特徴だ。前後2カメラ型だと死角になる、クルマの側方や室内の様子も記録できる。19年に起きたあおり運転事件ではドライバーが殴られる映像がテレビで流れたが、このようなシーンに対応できるのが360度カメラ型の強みだ。半面、後方の様子はリアウインドー越しの撮影となるため、前後2カメラ型ほど鮮明には映らない。このため製品によっては360度カメラとリアカメラを組み合わせているものもある。
カメラのタイプ別に、オートバックス店舗での売れ筋モデルを聞いた。それぞれ特徴があるので、自分の運転状況に合わせて、最適な1台を選んでほしい。
前後2カメラ型でナンバーを記録
コムテックはドライブレコーダー大手の一社で幅広い機種ラインアップを持つ。もともとはレーダー探知機のメーカーとして知られていた。「ZDR025」は前後ともフルHD(200万画素)の解像度を備えるスタンダードモデル。特にリアカメラには夜間撮影に強いソニー製のセンサー「STARVIS」を搭載。フロントカメラの視野角は172度、リアは167度と、ともに十分な広さを持つ。トンネル出口など、明暗差の激しい状況でも白飛びを抑えるHDR機能も備えている。録画した映像や各種走行データを見るための閲覧ソフトは、Windows 7/8.1/10に対応する。
オーディオ製品やカーナビでも知名度があるケンウッドも、ドライブレコーダー大手の一社。「ブランドへの信頼感から選ぶ人も多い」と鈴木氏。ケンウッド「DRV-MR745」は、解像度は前後フルHDで、HDR機能も搭載。リアウインドーがスモークガラスになっているクルマ向けに、画像の明るさを3段階で選べる「スモーク シースルー機能」を搭載する。録画映像や走行データの閲覧ソフトはWindows 7/8.1/10に加え、Mac OS X 10.7以降にも対応。Macユーザーにとっては貴重な選択肢だ。
セルスター工業もレーダー探知機メーカーとして知られているメーカーだ。「CS-91FH」はソニー製STARVISセンサーの中でも特に暗所性能が優れるセンサーを採用。夜間走行はもちろん、トンネル内やスモークガラス越しなど、光量が少ない場面でも明るく撮れるのが特徴だ。あおり運転などで後続車が接近すると自動的に警告音を鳴らす機能や、録画を保存する機能も搭載されている。映像・走行データの閲覧ソフトはWindows版のみ。
360度カメラ型で死角を減らす
コムテック「HDR360GW」は、フロントの360度カメラが前方、側方、室内を撮影し、クルマの後方はリアカメラが担当。独立したリアカメラによって360度カメラの弱点ともいえる後方も鮮明に撮影できる、いわば360度カメラと前後2カメラのいいとこ取りをしたような製品だ。後方からの接近に加え、幅寄せや室内でのやり取りなど、幅広い交通トラブルをカバーする。映像・走行データの閲覧ソフトはWindows 7/8.1/10に対応。リアカメラを省いて価格を抑えた「HDR360G」も販売している。
ユピテル「Q-20」は、コンパクトな360度カメラ型。「360度型としては価格が手ごろで注目の製品」と鈴木氏。リアカメラがない分、取り付け工賃も割安となる。ソニーのSTARVISセンサーを採用し、暗所にも強い。映像・走行データの閲覧ソフトはWindows版のみ。
鈴木氏が個人的なオススメとして挙げたのがカーメイトの「d'Action 360 S」。自分でも購入して使っているという鈴木氏は「価格は高いけれど、それに見合うだけの性能はあります」と自信たっぷり。本記事で紹介した他の機種が1つのカメラで360度撮影を実現しているのに対し、本機種は前方180度担当と後方180度担当の2つのカメラを搭載。水平方向だけでなく垂直方向も360度撮影できる「全天球360度カメラ」だ。360度映像に加え、よりクリアなフロント映像を同時に記録する機能がある。先行車のナンバープレートを読み取りたいときなどに有効だ。映像・走行データの閲覧はWindows 10またはiOS/Androidアプリで行う。
どのタイプのドライブレコーダーを選べばよいのか。後方からのあおり運転対策を重視するなら前後2カメラ型が最適だ。一方、側方からの幅寄せや室内の様子を記録したい場合は360度カメラ型が候補となる。オートバックスでの販売状況を聞くと、販売数のおよそ6~7割が前後2カメラ型、1割が全方位360度カメラ型、残りは従来の1カメラ型という構成だという。
ドライブレコーダーを選ぶときに忘れてはいけないのが、取り付け工賃だ。360度カメラ型は、従来のフロント1カメラ型と同様バックミラー裏に本体を設置するだけなので、比較的工賃は安い。一方前後2カメラ型は、フロントカメラに加えて、リアガラスにもカメラを設置する必要がある。フロントのカメラ部から車両後部まで長い配線が必要になるため、工賃も高くなる。オートバックスの工賃は店舗や車種によって異なるが、フロントカメラだけなら約5000~6000円、前後2カメラタイプで1万5000~1万7000円前後が目安だ。
(ライター 出雲井 亨)
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