ふるさと納税に落ち着き 返礼品規制で寄付先分散

返礼品の乏しい自治体は地域を見つめ直し、魅力を再発見するのが第一です。それが難しいなら、ほかに増収の道を探すべきでしょう。ふるさと納税はあくまで収入を増やす手段の一つにすぎないのです。

高岡和佳子・ニッセイ基礎研究所主任研究員「高額納税者優遇は見直しを」

ふるさと納税はこれからどうなるのか。制度に詳しいニッセイ基礎研究所の高岡和佳子主任研究員に聞きました。

――ふるさと納税が減ったのは、返礼品の額を寄付額の3割を上限にする法規制の導入の影響が大きいでしょうか。

「法規制の影響については2つの観点がある。3割を上限にしたことで、利用者にメリットがなくなったから寄付が減ったということはない。一方で影響があったのは、規制前の駆け込み需要だ。ふるさと納税の集計は年度。泉佐野市などが規制の始まる前に集めておこうと、2019年1~3月にキャンペーンを張ったので、1~3月の寄付が増え、18年度分に回った。それで19年度分が若干減った」

「ただ、増加率は鈍化しており、これまでのようには増えていかない。伸びしろはまだあるだろうが、上限に近いところまで来ている」

――お得感を競う返礼品競争は落ち着いたといえるでしょうか。

「返礼品の問題は3つある。自治体が寄付額のほとんどを返礼品につぎ込めば、財源の増収効果が少ない。この部分は3割の上限をつけることで支出を抑える効果がある。もう1つは自治体間の公平性の問題だ。1つの自治体が返戻率を高めるとそこに寄付が集中してしまうが、それも抑えられる」

「一方で納税者間の公平性はどうか。所得税率が高い人ほど、多く使えるところは変わっていない」

――高額納税者ほどメリットがある点は見直すべきでしょうか。

「ふるさと納税をすると、今は住民税と所得税が控除される。所得税は累進課税が逆に効いて、ふるさと納税できる額が指数的に増えており、その増えすぎる部分は見直すべきだ。控除の対象を住民税だけにすれば、不公平感はなくなる」

――今の制度では、寄付で税収が増えた自治体も、それによって地方交付税が減ることはありません。この点を見直す必要はありませんか。

「ふるさと納税の3つの理念の1つに、自治体に競争原理を入れるというものがあるので、それは構わないと思う。一方、税収が減った自治体に補填される制度については、地方交付税の不交付団体には補填されない。補填される自治体と補填されない自治体があるのは気になる」

制度見直しの余地はまだある(総務省のふるさと納税サイト)

――全体は減りましたが、3分の2の自治体が寄付額を増やしました。寄付先の裾野が広がってきたと言えるでしょうか。

「裾野が広がってきたと言えなくもないくらいだと思う」

――魅力的な返礼品のある自治体と、ない自治体の差は解消しがたいですか。

「返礼品が魅力的かどうかもそうだが、寄付先を探すのもコストがかかる。手間暇かけてさらに良いよいところを探すのはなかなか難しい。そうすると、以前に寄付したところとか、ランキングで人気の高い自治体などに集中してしまう。それはどうしようもないと思う」

――ふるさと納税を新型コロナウイルス対策に活用する自治体や被災した自治体のように、使い道で寄付先を選ぶ動きに広がりはみられますか。

「熊本地震や東日本大震災では被災自治体にかなり流れており、PCR検査の充実に使う世田谷区にも寄付が集まっているのはよい話だと思う。ただ、ふるさと納税全体からみれば小さい。結局、返礼品の返戻率の高いところに集まっている」

「コロナ対策では東京都が一番大変だが、東京都はふるさと納税に参加していないので、東京都にふるさと納税をしても税控除はされない。こういうこともあるので、制度に参加しておいた方がよいのではないか」

(編集委員 斉藤徹弥)

管理職・ミドル世代の転職なら――「エグゼクティブ転職」

5分でわかる「エグゼクティブ力」
いま、あなたの市場価値は?

>> 診断を受けてみる(無料)

「エグゼクティブ転職」は、日本経済新聞社グループが運営する 次世代リーダーの転職支援サイトです

NIKKEI 日経HR


転職こそ日経。次のキャリアに挑むなら「日経キャリアNET」

■大手・上場企業
■外資系企業
…など優良企業を多数掲載中

>> 詳しくはこちら

「日経キャリアNET」はビジネスに強い日経が作った総合転職サイトです。

日経キャリアNET

今こそ始める学び特集
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
注目記事
今こそ始める学び特集