今求められる経営参謀 「正しい問い」で社長を動かす『プロフェッショナル経営参謀』

現場で評価される姿勢とは

著者が高く評価する経営参謀2人との対談が収録されていて、現場の緊張感をイメージする上で参考になります。1人がリクルートホールディングス顧問の池内省五氏、もう1人はJTインターナショナルのシニア・バイス・プレジデントである筒井岳彦氏です。参謀役がトップと向き合った時の具体的な身の振り方などが率直に語られています。以下は筒井氏のアドバイスの一部です。

杉田 経営層への問いの突きつけ方や刺激の仕方について、心がけていることはありますか。
筒井 対立構造にしないことですね。衝突からは建設的なことが生まれにくいと思っていますので。
もちろん、ぶつかり合いがより良い意見を引き出すことも当然あるでしょう。でも、A派・B派がいたら。それぞれの意見を一定程度まで抽象化すれば、双方が一致することは多い。さらにその一致点を再度紐解いていくと、A派でもB派でもないC派が生まれることもよくあります。
ですから議論の中で対立構造が生まれたときは、どちらかに妥協していただいて勝ち負けを決めるのではなく、「ここまで抽象化すると、皆さんは同じことをおっしゃっていますよ」と言えるかを常に考えます。実際、双方が言っていることの本質は同じで、単にアプローチがAかBかで異なるだけということは多いですから。
(対談2 課題設定力を磨き、「質問していい相手」を増やす 293~294ページ)

「おわりに」で著者は、できるだけ若いうちから経営参謀の視点を持とうと呼びかけます。20代の頃から「自分が社長になったらどうするか」という視点からものごとを考え、行動せよということです。欧米のグローバル企業ではこうした姿勢が当たり前だといいます。意識や意気込みの違いは20年、30年たつと大きな差になって表れるでしょう。

「経営参謀とは、未来のトップリーダー予備軍である。本書を読んだ方が、高い壁を超えて本当の意味でのプロフェッショナルな経営者になってくれたとしたら、著者として望外の喜びである」。次世代のリーダーに向けたエールで著者は本書を締めくくっています。

◆編集者からひとこと 日本経済新聞出版・赤木裕介

本書はまさに次代の経営トップとなる「若手リーダー」にこそ読んでほしい1冊です。経営企画や戦略スタッフといったポジションを狙う方は多いと思いますが、本当の意味でその役割を理解するのは容易ではありません。彼らの活躍ぶりがメディアに登場したり、社内で大々的に取り上げられる、という機会はあまりないですし、どんな能力が必要なのかを言語化することが非常に難しい仕事だからです。

この本では、BCGで長年多くの経営者、経営参謀と仕事をしてきた著者が、その経験をもとに切れ味鋭く分析しています。単にトップの意向を忖度して上意下達で伝えるのではなく、プロフェッショナルとして力を発揮するためには、どんな経験を積み、どんな意識を持てばいいのか。本書には考えるヒントが満載です。ぜひ、若いうちから取り組んでいただければと思います。

一日に数百冊が世に出るとされる新刊書籍の中で、本当に「読む価値がある本」は何か。「若手リーダーに贈る教科書」では、書籍づくりの第一線に立つ出版社の編集者が20~30代のリーダーに今読んでほしい自社刊行本の「イチオシ」を紹介します。

プロフェッショナル経営参謀

著者 : 杉田 浩章
出版 : 日本経済新聞出版
価格 : 1,870円 (税込み)

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