豊洲市場の仲卸が厳選した「旬のMEKIKI便」

次に注文してみたのが、こちらも3月に開始した「旬のMEKIKI便」である。8時までの発注分について、翌日の早朝に発送。東京23区内であれば早ければその日の午前中、23区外の都内や関東圏(神奈川・千葉・埼玉・群馬・茨城・栃木)でも夕方までに届くというサービスだ。発送日の翌日着となるが、それ以外の地域からでも注文できる。

仲卸業者「布長」の冷凍マグロもラインアップ。豊洲市場内で売っている旬の野菜なども併せ買いできる

今回、頼んでみたのが旬の鮮魚がセットになった「美濃桂 鮮魚セット」(3~5品、税込み5724円)と「飯田水産 鮮魚セット」(2~4品、税込み2916円)。実は商品名にある「美濃桂」「飯田水産」とは、豊洲市場の仲卸業者のこと。出荷日に仕入れた魚の中から、仲買人が自信を持って薦める鮮魚を厳選している。

この日届いた鮮魚を見た小島シェフは、「イサキやアイナメは身がしっかり締まっているし、イワシも身が丸々と太っている。本当に良いものだ。両仲卸業者は、豊洲市場でも一流の目利きがいることで知られ、私も仕入れでお世話になる。さすがだ」と褒めた。

島根県の浜田漁港にも独自の仕入れルートがあり、ブランドアジとして有名な「どんちっちアジ」が買えるのは珍しい

5~7月ごろに産卵期を迎えるまさに今が旬のイサキが飛び切りおいしそうだと見た小島シェフは、カルパッチョを作ることを即決。イサキをスライスして塩とコショウを振ってガラスの皿に盛り付け、ミキサーを使って作ったパプリカベースのソースを掛けて旬の野菜を美しく散らした。早速食べてみると、小島シェフが言うようにイサキは確かに身がプリプリで、スーパーでよく売っているイサキの刺し身とは明らかに歯応えが違う。

イサキのカルパッチョ/三枚に下ろしてスライスし、塩・コショウして盛り付け。ソースはパプリカなどをミキサーにかけたもの

もう1品に使ったアイナメも4~8月が旬の魚で、小島シェフは素材の良さを引き立てるためアクアパッツァを作ることにした。フライパンでアイナメを焼き色が付くまで弱火で焼き、ハマグリや野菜を追加してワインで蒸し焼きにした。アイナメは和食店でたまに煮付けとして食べるが、アクアパッツァのアイナメを取り分けてみるとフォークで取っても身が崩れることが無い。ハマグリなどが引き立て役となり一気に食べてしまうほど美味だった。

アイナメのアクアパッツァ/オリーブオイルを引いたフライパンで、弱火で焼き色が付くまで焼く。ひっくり返して、併せ買いした旬の野菜やハマグリを入れてワインで蒸し焼きにする

一般向けには小売りをしていない有力仲卸業者から直で仕入れができるのは、旬のMEKIKI便を提供する東京築地目利き協会が17年から魚食文化推進活動に熱心に取り組んできたためだ。移転問題に揺れていた築地市場の文化を、座学や実技を通じて多くの人に知ってもらう「築地魚がしコンシェルジュ認定講座」などを3年にわたって開催。講師として招いたことがきっかけで知り合った仲買人と交流を深め、活動を通じて信頼を獲得。徐々に広がっていった「人の輪」の中には、ミシュランの星付き飲食店が信頼を寄せる生マグロ専門の仲卸業者なども含まれる。

「ネット通販を通じて、週替わりで変わる魚の旬の素晴らしさを知ってほしい。物に加えて、知識と技術と体験も届ける」(代表理事の佐藤篤子氏)。ウェブサイト上では、その週に出荷した魚にまつわる基礎知識や、野菜ソムリエによる旬を最高に楽しむレシピを逐次公開。ライブコマースによる買い物ツアーも検討しているという。

ポケットマルシェの珍しい深海魚は「驚きの食感」

最後が、全国に19万人の利用者がいるオンライン直売所「ポケットマルシェ」である。野菜や果物、肉などを幅広く扱っている同サービスには、漁師も多く登録している。多くが水揚げしたばかりの魚を漁港で梱包し、注文者に直送している。

今回注文したのは「岩手の鮮魚セット」(税込み2832円)。岩手県三陸海岸の尾崎白浜漁港から送られてきたのは、タラの仲間であるエゾイソアイナメ(通称ドンコ)やキツネメバル(通称マゾイ)など東京のスーパーではなかなかお目にかかることが無い珍しい魚ばかりだ。

漁に出た日によって違う魚が届く楽しみがあるため、同じ漁師から鮮魚セットをリピート買いする人も多い
岩手の鮮魚セットで届いたのはエゾイソアイナメ(2匹)、キツネメバル(2匹)、タコ(1杯)。口から胃袋が出ているのが深海魚のエゾイソアイナメ(通称ドンコ)

これらの魚を水揚げした第三漁裕丸の佐々木洋裕さんによると、エゾイソアイナメがイチ推しだという。小島シェフはフリットにすれば新鮮さが引き立つと考えた。酒と薄口しょうゆに漬け込んで、片栗粉をまぶして揚げることにした。東北では唐揚げにすることが多いそうだ。

エゾイソアイナメのフリット/三枚に下ろしてカットしたら酒と薄口しょうゆに5分ほど漬け込む。片栗粉をまぶして油で揚げる

実際に食べてみると今までに食べたことが無いふわふわした歯触りが新感覚。シェフも「ドンコは以前仕入れたことがあったが、今回届いたのは今までで最も、ものが良い。簡単においしいフリットに仕上がった」と評価する。

(日経トレンディ 高田学也、写真 中本浩平)

[日経トレンディ2020年8月号の記事を再構成]

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