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トヨタウェイは世界を変えたか

2020/8/24

トヨタウェイは世界を変えたか

エンジニアが自ら考え行動するための指針に

佐藤智恵(さとう・ちえ) 1992年東京大学教養学部卒業。2001年コロンビア大学経営大学院修了(MBA)。NHK、ボストンコンサルティンググループなどを経て、12年、作家・コンサルタントとして独立。最新刊は『ハーバードはなぜ日本の「基本」を大事にするのか』。

佐藤 ラグナサンさんのリンクトインのページには、テスラ在籍時のチームメンバーから「部下思いの素晴らしいチームリーダーだ」「自分を成長させてくれた彼のもとでまた働きたい」など、リーダーシップを称賛するコメントが寄せられています。リーダーとして成長する上で、トヨタ生産方式はどのように役立ちましたか。

ラグナサン テスラでは6人のエンジニアチームのリーダーでした。チームメンバーには時間をかけて、「現地現物」「平準化」「5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)」「プルシステム」「物と情報の流れ図」などトヨタ生産方式の基本コンセプトについて教えました。トヨタ生産方式は数学でいえば「公式」のようなものです。私自身もそれがもたらす価値を目の当たりにしてきましたから、必ずやメンバーの役に立つと考えました。トヨタ生産方式は、テスラのエンジニアが自ら考え、行動するための指針となったと思います。

またトヨタ生産方式の基本となる考え方は、私のリーダーシップスタイルにも影響を与えました。チームとして達成すべき目標や効率性をより意識したリーダーシップをとれるようになったからです。この仕事は顧客に価値をもたらしているか。この仕事にはムダはないか。こうしたことをメンバーに自ら考えてもらい、自ら行動してもらうような環境をつくること。これがチームリーダーとしての大切な役割だということをトヨタ生産方式から学びました。

顧客のニーズから始まり、顧客に還元

佐藤 トヨタ生産方式は、どのような点が優れているのでしょうか。

ラグナサン 1970年代から80年代にかけて、トヨタ生産方式は世界の製造業に大きな影響を与えた革新的な生産方式でした。その後、多くの企業で導入され続け、現在はむしろ「世界の生産方式の基本」になっていると思います。生産現場で働く人に、仕事の進め方、考え方、行動などを示す指針です。

私が特に優れていると思うのは、自動車製造のバリューチェーンをすべてとらえているところです。まず顧客にどのような価値をもたらせるかを考える。そこからどんな製品をつくればいいかを考える。次にどのようにしたらそういう製品がつくれるかを考える。さらに、どのようにしたら顧客が望む製品を無駄なくつくれるかを考える。トヨタ生産方式は顧客のニーズからスタートし、顧客に還元するところで完結するのです。

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