世界の製造現場に秩序 トヨタ生産方式が実現した成果アディ・ラグナサン氏(下)

アディ・ラグナサン氏はテスラで「モデル3」の組み立てラインのチームリーダーを務めた =ロイター
アディ・ラグナサン氏はテスラで「モデル3」の組み立てラインのチームリーダーを務めた =ロイター

日本を代表する企業として世界の注目を集め続けるトヨタ自動車。とりわけその価値観の中核にあるトヨタ生産方式(TPS)は、ハーバードビジネススクールをはじめ多くの経営大学院で教材となるなど、世界に与えた影響は大きい。米国のビジネス最前線でTPSと向き合うキーマン3人に、作家・コンサルタントの佐藤智恵氏が話を聞いた。3人目のキーマン、テスラでエンジニアチームのリーダーを務めたアディ・ラグナサン氏(ハーバードビジネススクール在学中)は「トヨタ生産方式は製造現場に秩序をもたらした」と話す。

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■「モデル3」生産現場で続いた試行錯誤

佐藤 2016年にテスラに入社したラグナサンさんは17年、「モデル3」の組み立てラインのチームリーダーに就任します。「モデル3」においては、当初の納車台数計画を大幅に下回るなど、多くの問題が報じられました。現場ではどのような問題に直面していたのですか。

ラグナサン 「モデル3」の生産を始めるにあたって、テスラは選択を迫られました。トヨタ生産方式を基本とした「モデルX」の生産方式をそのまま踏襲するか。それとも全く新しい「テスラ生産方式」をあらたに生み出すか。

アディ・ラグナサン氏

テスラが最終的にめざしたのは、製品だけではなく、生産ラインそのものでも革新的なイノベーションを起こすことでした。そこで「モデル3」の生産では、ロボットによるオートメーション化を推進し、これまで存在しなかったような生産ラインをつくることに挑戦することにしたのです。

ところが、新たに導入した生産方式では、数多くの問題に直面することになりました。「モデルX」の生産では解決できていた問題が、解決できなくなってしまったからです。

たとえば、トヨタ生産方式では、人間が失敗した場合は、「すぐにラインをとめて、問題の真因をつきとめて、皆で問題を解決する」のが基本です。その背景にあるのは「やり直しはムダである」という考え方です。

ところが、新しいテクノロジーをテストしようとすると、ロボットが失敗してしまうことも多々あります。ロボットが失敗した場合、果たしてどうすればいいのか。これについての確固たる解決法はありません。ロボットが原因なのか、その他の人間に関わるところが原因なのか。またロボットが原因だとわかったとしても、ロボットはとても複雑な装置ですから、ロボットのどこに問題があるのか。毎回、手探りで問題を解決していくしかありませんでした。製造技術の分野でも革新的なイノベーションを起こすことに挑戦していたため、こうしたトラブルシューティングに多くの時間が割かれることになってしまったのです。

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