パン1枚だけ焼けて価格3万円 三菱ブレッドオーブン

日経クロストレンド

発売から1年以上たっても人気が衰えない三菱電機の「ブレッドオーブン」
発売から1年以上たっても人気が衰えない三菱電機の「ブレッドオーブン」
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バルミューダ(東京都武蔵野市)が切り開き、一大分野となった高級トースター市場。そこに2019年4月、三菱電機が投入したのが「三菱ブレッドオーブン(TO-ST1-T)」だ。価格は3万円以上だが、発売から1年以上たった今でも売れ続けている。その理由を再検証した。

価格3万円超でも、想定の2倍を売り上げる

ボックス形をした本体の上下にヒーターを搭載したプレートで、食パンを挟んで焼くというスタイルがユニークな「三菱ブレッドオーブン(以下、ブレッドオーブン)」。近年の高級食パンブームも相まって、おいしい食パンを求める消費者が増えているとはいえ、価格は既存の高級トースターを優に超える3万円オーバー。その上、一度に1枚しか焼けないという代物だ。

ところが蓋を開けてみると発売前から多くの予約が入り、家電量販店からの注文も相次いだ。その結果、発売前の段階で初回生産分が全て売り切れてしまった。三菱電機によると発売初年度の2019年は、当初想定していた2倍の売り上げを記録したとのこと。その勢いは20年も続いている。夏を迎えた現在、トースターの需要期でないにもかかわらず、7月12日にテレビ番組「アッコにおまかせ!」(TBS)の「2020年上半期にブレイクした家電!」で取り上げられたことも手伝い、売れ行きは好調に推移しているという。

現在の家電市場はいわゆる「一点豪華主義」の製品に注目が集まりやすく、ヒットする傾向が見られる。バルミューダのトースターだけでなく、ダイソンのコードレス掃除機、アイロボットのロボット掃除機「ルンバシリーズ」、バーミキュラの炊飯鍋「ライスポット」などは、既存の相場より明らかに高額ながら消費者の心をつかんでいる。ブレッドオーブンもその典型といえるだろう。

三菱電機が意を決して投入した「1枚焼き」の高級トースター。上下フラットヒーターと密封断熱構造が効率よく熱を伝えつつ、食パン内の水分と香りを閉じ込め、焼き窯から取り出した焼きたてのおいしさを再現する。トーストは耳まで軟らかく、フレンチトーストもふわふわに仕上がる。

実際にブレッドオーブンで焼いた食パンを何度も食べたが、確かにどの高級トースターで焼いたものよりもおいしいと感じる。一口かみ締めたときの鼻に抜ける香ばしい香り、口の中に心地良く広がり舌を伝ってくる甘み、かりっとした表面の歯ざわりと耳を含めたもちっとした食感のバランス、どれも従来のトーストとは一線を画する焼き上がりだ。

2019年4月発売のブレッドオーブンの実勢価格は3万3000円(税込み)とかなり高価

そもそも「従来とは一線を画すトースト」とはどんなものか。それを理解するには、トーストの味覚を、「香り」「甘み」「食感」に分けて考える必要がある。

まず一般的なトーストの香りとは、実は「焦げ臭」のこと。一方、焼きたての食パンをトーストして香りをかぐと、イーストなどに含まれる香気成分が感じられる。甘みを左右するアルファ化のレベルも段違いで、口に含むと明らかに強い甘みがある。さらに食パン本来の水分を逃していないので、食感はもっちりとしている。こうした焼きたて食パンのおいしさを、普通の食パンでも引き出せるのがブレッドオーブン最大の売りだ。

ブレッドオーブンで焼くと……
かりっともちっとした食パンが手軽に焼ける

ブレッドオーブンは「おいしいトースト」を3つの独自アプローチで実現している。まずは前述の「1枚焼き」。食パン1枚サイズの庫内と近接ヒーターで高い加熱効率を実現。かつ食パン両面の温度をセンシングし、綿密に加熱を制御している。続いて「密封断熱構造」。ヒーターの熱、食パンから出た水分(蒸気)と香りを外に漏らさないので、狭い庫内に蒸気と香りが充満し、食パンの水分が内側や耳へと無駄なく入り込む。

最後が「プレート加熱方式」。食パン両面を均一に、水分を逃さず焼き上げる。結果的に水分を閉じ込めるため、1.4倍の温度で表面をかりっと焼き上げ、2.5倍のスチーム量で内側や耳をふんわりと仕上げる。これらの技術を駆使し、たとえ普通の食パンであっても、その潜在能力をフルに引き出してやろうというのが、ブレッドオーブンのコンセプトだ。

密封構造で上下の加熱プレートにより、1枚の食パンをむらなく焼ける
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