――きちんとした服をぴったりのサイズで着る。当たり前のようでいて、なかなか実行できないという人もいます。
「やはり一度はお店に足を運んでいただきたい。父が時々、お店に突然現れて、お客さんのサイズを測っては間違いを指摘していました。襟は本来指1本くらい入るのがちょうどいい。父にはそうしたこだわりがありました。今の日本では指2本以上の余裕がないとみなさん、きついきついと言いますが。会長にとっては『問答無用』(笑)。プロに学ぶとはそういうことです。最初は面倒くさがらずに勇気を出して、自分の本当のサイズを見てもらったほうがいいですよ」

「自分の服が空間をつくる」を意識
「服装を整えると確実に見た目は変わります。うちの提案はファッショナブルとまではいかなくても、万人受けするおしゃれを楽しむお手伝いができます。最初の一歩としては向いている会社なんです。商品は安心・安全。そうしてファッションを好きになれば、次はどういったものをどういったシーンで着ようか、となる。Tシャツとジーパンばかりだった人が、仕事での格好にもう少し気を使いたいな、アドバイスがほしいなと思った時の、選択肢の1つになりたいです」
――人生100年時代といわれ、長く働く人も一段と増えます。装いはさらに大事になりそうです。
「男性も女性も年齢に合ったたたずまいがあります。年をとるほどに上質なものを着なくてはいけない、というのには理由があります。若い人はその人自体が美しいので安物でもカバーできますが、年を重ねて見た目が衰えるほど、逆に服装に助けられるからです。日本のおじさまたちの中には、おなかがでて、頭髪も薄くなって、もう格好なんていいや、と思う方もいますけど、そういう方ほどきちんといいものを着ると、それなりにすてきに見えるもの。イタリア人はまさにそうです」
「母は介護施設にいますが、朝起きるとパジャマから普段の服に着替えて、ダイニングでお食事を取っています。ちょっとした日常の場面場面で、着るものでメリハリをつけることはすごく大切。この格好ならこれをする、という風に自分自身をチェンジするきっかけが、お洋服だと思うのです。それが生活を彩る要素の一つになります」
――一人ひとりの服装は、周囲の雰囲気を創り出す役割も担っています。
「レストランで食事をする人たちが身ぎれいで、きちんとしていれば、空間全体の格が上がります。自分たちもそんな役割を担っているということを意識する。そして、いいモノを着たり持ったりしていると、それなりの扱いを受けるのは確かなんです。私も自分はたいした人間ではありませんが、モノに助けられるということがあります。大切に扱ってもらえたらうれしいので、出かけるときはいいものを持つようにしています」

「気を使えば誰しも、それなりに見えるようになる、というのがファッションの面白いところです。私たちは、上質なものを日常の中に取り入れてもらいたい、という思いがあって、この品質と値段で商品を作っています。いいものを体験して、その時にみえる自分が、相手にどういうインパクトを与えるのか、ということを体感してもらう。すると、洋服への興味が湧いてくる。うちの商品を着たら、必ずそうなる、という自信があります」
(聞き手はMen's Fashion編集長 松本和佳)

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