途方もなく長く感じた梅雨が終わり、本格的な夏が到来…したと思いきや、瞬く間に9月に差し掛かりつつある2020年。とはいえ、季節はまだまだ盛夏の趣。ほんの少し外を出歩くだけでも、激しく体力を消耗する酷暑の日々が続いている。ここまで暑いと、食欲は大幅に減退。とりわけ、ラーメンの熱いスープをすする気力など早々にうせてしまいがちだ。そこで、今回はスープを飲まなくてもラーメンの魅力が堪能できる「汁なし(汁なしラーメン)」を提供する店舗を2軒ご紹介することとしたい。
「汁なし」と言えば、皆さんはどのような1杯を思い浮かべるだろうか。結論から申し上げれば、そのスタイルは千差万別。麺とタレ・油だけで食べさせるオーソドックスなものから、店独自の趣向が凝らされた変わり種に至るまで今、まさに百花繚乱(りょうらん)状態である。スープを必要としない分、それ以外のジャンルのラーメンと比較して、タレの味やトッピングの種類などの自由度が圧倒的に高い。食べ手にとっては、店ごとに異なる味が楽しめるわけで、最近は「汁なし」に絞って食べ歩きするマニアもチラホラ見かけるようになってきた。
このコラムでも、読者の皆様方の嗜好が多種多様であることを踏まえ、オーソドックスなタイプと独創的なタイプの2種類の「汁なし」をご紹介しよう。興味が湧かれたら是非、一度足を運んでみていただきたい。
「汁なし」揺籃の地で実直に紡ぎ続ける、ザ・スタンダードな油そば!~店舗は西武新宿線田無駅南口から徒歩3分程度。
西東京市中央図書館、同市役所田無庁舎など西東京市民が日常的に活用する施設の近傍に位置する。『油そば5坪』は、2016年1月にオープンした。
2020年8月現在、開業から既に4年以上の歳月が経過。西東京市田無エリアは、『ラーメンくれは』『麺匠ヒムロク』『麺屋瑞風』など、そうそうたる人気ラーメン店を擁する一大激戦区。そんな激戦区で5年近く営業を継続してきた。その一事をもってしても、同店が相応の実力を備えていることがご理解いただけるのではないだろうか。

同店が提供するのは、いわゆる正統派の油そば。ご存じの方もいらっしゃるとは思うが、西東京市が属する武蔵野地域は、「汁なし」揺籃(ようらん)の地。1957年に武蔵境(武蔵野市)に創業した『珍珍亭』の「油そば」を同系統の元祖とするのが通説だ。