帰還成功、スペースX有人宇宙船 飛行士が見た地球

日経ナショナル ジオグラフィック社

その日、キャシディ氏と、同じくISS長期滞在クルーである2人のロシア人宇宙飛行士アナトーリ・イワニシン氏とイワン・ワグナー氏は、ベンケン氏とハーリー氏の送別会を開いた。そのときキャシディ氏は、年季の入った米国旗をハーリー氏にプレゼントした。これは1981年、スペースシャトルの最初のミッションのメンバーが宇宙へ持って行った旗である。そして2011年には、ハーリー氏自身が最後のスペースシャトルのパイロットを務めたときにISSに持ってきたものだ。

「私たちが置いていってから約9年間もここにあったことになります」。ハーリー氏はそう言った。「この旗を持ち帰り、次のミッションへと受け渡せることを誇りに思います」

7月21日、宇宙服を着たベンケン氏がヘルメットのバイザーを上げて「宇宙自撮り」をした(PHOTOGRAPH BY BOB BEHNKEN)
7月27日、ベンケン氏がISSから撮影した、朝日が昇る様子。4枚の写真から合成。ISSは90分ごとに地球を周回し、太陽の光に照らされたり地球の陰に入ったりを繰り返す(COMPOSITE OF FOUR PHOTOS BY BOB BEHNKEN)

そうしてベンケン氏とハーリー氏はクルードラゴンに乗り込み、ISSを離れた。2人がそれぞれ2008年と2009年に新人飛行士として初搭乗したスペースシャトルにちなみ、両氏はこの宇宙船を「エンデバー号」と呼んだ。

「比較的小さいので、スペースシャトル時代のように7人が乗るとなると、じっとしたままになるかもしれません」とベンケン氏は語った。「電話ボックスのようだとまでは言いませんが……乗るなら4人までの方が確実に快適だと思います」

自律的なエンジン噴射を繰り返してISSから分離したあと、エンデバー号は地球への帰途についた。2人を乗せた船室の下には、ゴミが詰まった約2900キログラムの使い捨てトランクが付いており、地球の大気で燃やし尽くすべく切り離された。

クルードラゴンは大気圏に時速約2万8000キロメートルで突入した。トランクで覆われていた部分には耐熱シールドが付いている。宇宙船は大気圏の抵抗で時速約560キロメートルまで減速し、その後、次々とパラシュートを開くことで、さらにスピードが緩められた。メキシコ湾に着水すると、2人は迎えに来た船に移り、それから飛行機でテキサス州ヒューストンへ戻った。

過去の例を見ても、宇宙飛行士は着水の際に吐き気を催すことが多い。長期間の宇宙滞在により、ただでさえ方向感や平衡感覚が鈍っているところへ、それらを司る内耳液が、久しぶりに味わう重力によって影響を受けるためだ。これを知るベンケン氏とハーリー氏はどちらも、強烈な船酔いに対処するに「ふさわしい道具」がエンデバー号に備え付けられていると口をそろえた。

「必要ならすぐ手に取れる場所にエチケット袋が置いてあります。たぶんタオルも」。ハーリー氏はそう言っていた。「宇宙船の中でこういう事態が起こるのは、初めてのことではないですからね」

しかし、ちょっとした吐き気を除けば、ベンケン氏もハーリー氏も無事だった。

次ページでも、民間が切り開いた有人宇宙船に搭乗した宇宙飛行士の活動の様子や、彼らが撮影した美しい地球の姿をご覧いただこう。

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