「ジョブ型」「メンバーシップ型」、それぞれの課題

メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用に移行すべきだという議論の背景には、「メンバーシップ型は終身雇用を背景にしている制度であるため、長期勤続者が多く、仕事の範囲も幅広く、属人的な業務が多い」という課題が挙げられていました。会社への帰属意識は高くなるものの、個人から見たときには、転職するリスクが高く、優秀な人材でも流動化しづらい社会を生む結果となっていました。

一方で、人材の柔軟な流動を促すと言われているのがジョブ型雇用。「仕事内容に必要なスキルがあるかどうか」というものさしで人材を流動化できるので、実務に即した基準で雇用が成立する合理的な形態といえます。

会社ごとの流儀や仕事の進め方に依存するのではなく、自立して学習していくことが求められる点や、セルフマネジメントが基本となるということから考えると、リモートワークが当たり前になる社会には適合した形だと思われます。

労働力の移動を前提にしたジョブ型雇用には、課題も指摘されています。たとえば、社員を特定の職務に限定して採用する以上、何らかの事情でその職務が不要になった場合、最終的には解雇せざるを得ない性質を持っていることで、「解雇権濫用法理」で労働者の権利が保障されている日本の現状とのギャップを指摘する声があります。解雇を当たり前にする社会を生み出すのではないかというリスクを課題と指摘する声もあります。

しかし、メンバーシップ型雇用にも限界があります。メンバーシップ型雇用は、「新卒一括採用」「年功序列」といった雇用慣行とセットで定着してきました。新卒一括採用型は職種を限定せずに総合職として採用する場合も多く、職種や仕事内容をローテーションさせて幹部候補人材を見極め、会社を長く支えていく人材を育てていく方針です。

会社へのロイヤルティー(忠誠心)などのメリットもあるものの、「専門職の人材が育ちにくい」といったデメリットもあるため、IT(情報技術)化の進む現代にそぐわない部分が課題とされてきました。平成の30年で製造業を中心とした日本の上場企業の時価総額が、GAFA(アルファベット、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)と呼ばれる4社の時価総額に抜かれるという存在感ダウンの要因ともいわれてきました。

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ジョブ型雇用時代にどう向き合うべきか?
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