まずは1カ月で始めてみよう

白河 「本当に帰国後の出社初日に動き始めたそうですね」

仲井 「はい。さっそく調べてきてくれまして、『グループ従業員約2万5000人のうち、3歳未満の子どもがいる男性社員は1500人ほどです。1500人が一気に3カ月休むと、決算が危ぶまれます』と。いきなり3カ月は難しいと分かったので『じゃあ、まずは1カ月から始めてみよう』と思い切りました」

白河 「公園でご覧になった風景がよほどのインパクトだったんですね。経営的な観点から考えることはとても重要です」

仲井 「とにかく、街中で育児を堂々としているスウェーデンの男性たちの姿がカッコよかったんですよ。刺激を受けました。『この光景を日本でも実現したい』という気持ちが湧いてきたんです」

白河 「街をつくる事業をやっていらっしゃるから、映像からインスピレーションを受けるのでしょうね。それも、投資家向けのミーティングの後だったという点が象徴的だと感じます。ヨーロッパの投資家は特にESG(環境・社会・企業統治)投資に敏感ですし、ダイバーシティーやワークライフバランスに対する仲井社長の課題意識も刺激されていたのではないでしょうか」

仲井 「たしかに、ヨーロッパの中でもスウェーデンの会議ではESG投資に対する議論に多くの時間を割いた記憶がありますね。当社は環境面ではゼロエネルギー住宅を世界一売っているという実績があるのですが、ダイバーシティーや女性活躍の面では『グローバル基準と比較するとまだまだですね』とご指摘を受けることも多かったので、余計に『イクメン』がまぶしく映ったのかもしれません」

どうしてもこだわりたかったのは育休の対象者が100%取得することだったという

白河 「御社が本社を置く関西は、首都圏と比べて共働き率も低く、男性の育児参加への理解や意識浸透はまだまだこれからだとよく聞きます。その中で非常に先進的な取り組みに舵(かじ)を切られましたね。しかも、決定から実行までのスピードがとても速かった」

仲井 「衝撃の光景を見た出張が18年6月でしたが、制度設立のリリースは7月、運用を始めたのは9月。その間、3カ月でしたね」

白河 「素晴らしいですね。メディアで取り上げられるほか、政府の委員会にも招へいされていましたよね。100%の目標も達成され、非常にうまくいっている事例のように見えますが、制度化する当初は社内に反対意見はあったのでしょうか」

仲井 「幹部の1人、2人から反対意見は出ましたよ。『そんなぬるい制度をつくってどうするんだ』と。しかし、大多数は賛成でしたので、経営判断として決議しました」

休業計画には奥さんの署名が必要

白河 「運用面で取得しやすくなるための工夫が重要になります。御社の場合は、まず、休業期間の1カ月を4分割までOKと柔軟に設定した点が工夫でしょうか」

仲井 「そうですね。私がどうしてもこだわりたかったのは100%取得で、そのための運用方法は優秀な現場の担当者に考えてもらいました。4分割でやってみるのは、当社としても実験なんです。ひと口に育休といっても、奥さんが働いているかどうか、近隣に頼れるご両親や親族がいるのか、きょうだいはいるのかといった様々なケースによって取り方のニーズは違うはずです。どのような取得方法だと浸透しやすいのかを測る実験でした。結果としては、1カ月の休業をまとめて一度に取ったのは25%程度で、残りの75%は分割を選んでいます。一番多かったのは4分割でした」

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顧客からも好意的な反応