空白期間に考えたこと

実はもともと、私は「ほぼ日」の熱心な読者だったのです。私がちょうど中学生の頃、糸井重里さんの西武百貨店(現そごう・西武)のコピーが注目されていました。東京出身の私にとって、糸井さんは渋谷で遊んでいた中学生や高校生の頃の自分を取り巻くカルチャーの仕掛け人で憧れの存在でした。

その糸井さんがインターネットで何かをやり始めたらしい、と耳にしたのは、私がMBA(経営学修士)を取得するために米国に留学していたときです。日本語の情報に飢えていたので「ほぼ日」を読むことが楽しみで、ときどき関連グッズを買ったりするくらいファンでした。

マッキンゼー時代、研修に参加した同僚たちと。各国から社歴の近い人たちが集まった(左から2人目が篠田さん、英ロンドン郊外で)

時間的にも精神的にも制約がある状況に閉塞感を感じていた中で、仕事と自分の好きなことの時間が重なるのはありがたい。何より大好きな「ほぼ日」で働くことは自分にとって最善の選択だと思えました。

そこから「ほぼ日」には10年間、お世話になりました。それまでの職歴では5年以上1つの会社で働いたことはありませんでしたから、「ほぼ日」に入ったときもそんなに長くいるとは考えていなかったのです。

「ほぼ日」ではCFOという役割をいただいて、主要ミッションである「上場」は2017年3月に達成。その後、上場企業としての様々な業務も比較的スムーズに回り始め、「会社が次のステージに進んだ」と感じたタイミングで「ほぼ日」を去る決心をしました。

責任をもって最後まで業務をやりきりたいという思いがあり、「ほぼ日」の在職期間中に転職活動はせず、次を決めないまま辞めてしまいました。その後、現在のベンチャー企業に入社するまでの空白期間は1年3カ月。過去の転職では必ず行き先を決めてから退職していたので、このような経験は初めてでした。

最初は「とりあえず2、3カ月休んでから、ご縁のある会社が見つかればいいな」という程度に考えていました。ところがこの2、3カ月がなかなか忙しい。友人や知人が「ご飯を食べよう」「会って話そう」と声をかけてくれて、1日に3、4件の約束が入るような状況でした。

そんな中、友人からこんなことを言われました。「2、3カ月だと、知っている人だけに会って終わりませんか」と。私の予定はまさにその通り。その人も、今の仕事に就く前に数カ月空けた経験があり、それを私にも勧めてくれたのです。少し長めに期間をとることで、今までの自分のつながりとは別のつながりが広がるので、可能ならばそこまで時間をとったほうがいいと。すばらしいアドバイスだと思いました。

そこで1年、間を置こうと決めて、それからご縁があり今の会社に入ることになりました。仮に当初考えていた通り2、3カ月しか休まずに行き先を決めようとしていたら、今の会社には入っていなかったかもしれません。

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