たとえばプレーイングマネジャー型の田中営業課長を想定してみましょう。

田中さんは課長として10人の課員がいる課全体の売り上げ責任を負っていますが、実は彼自身の売り上げが全体の25%をも占めています。課長になる前はスーパー営業社員だったし、お客様も田中さんのことを信頼しています。だから部下に引き継ぐよりは、田中さん自身が営業を担当してくれていることでさらに関係性が強化されます。

さて、このような状況でリモートワークになった場合に、田中課長はどのような働き方をするでしょうか?

課の25%をも占める売り上げを担当しているとなると、激変する環境の中でお客様への対応に多くの時間をとられることでしょう。そしてそうすることで契約を維持し、売り上げを確保することができます。スーパー営業社員だったころの能力は、プレーイングを続けているためさびついてはいません。

しかし週に1回の営業会議で、田中課長はがくぜんとします。10人いる課員たちがことごとく売り上げを下げてしまっているからです。そこで田中課長は叱責したり、聞きかじったコーチングスキルを発揮しようとしたりします。が、うまく機能しません。

さらに課員の一人からはこんなことを言われてしまいます。

「僕たちは田中課長みたいなスーパーマンじゃないんです。こんな状況じゃ誰だって売り上げを下げてしまってもしょうがないですよ」

背中を見せるより課員を見る

それもそうかもしれない、と納得する田中課長ですが、課長同士が集まる月次の営業会議で、売り上げを下げていない課がいくつかあることを知って驚きます。

その中の一人、1つ後輩にあたる山下課長に話を聞いてみるとこんな答えが返ってきました。

「今日みんながどんな作業をする予定なのかスケジュールを見ればわかるものの、なんとなく見過ごしてしまうんですよね。だからリモート朝礼を始めてみたんですよ」

朝礼は田中課長もやってみています。けれども逆に、スケジュールを見ればわかるので報告は不要だといつしか廃止していました。

「そうですね。スケジュールを見ればわかることじゃなくて、会社全体の状況を話すか、雑談をするようにしています。たまに後ろにお子さんが出てくる課員もいて、なごやかですよ。あとは前日の様子を踏まえて今日の対策について議論するとか」

山下課長はさらにこんな答えを返してくれました。

「営業もリモートですよね。全員の営業になるべく同行という感じで、課長としてログインもしようと思ったんですが、時間がどうしてもあわなくてね。だから営業が終わった時点ですぐにチャットツールに感想を書いてもらっています」

田中課長も営業管理システムにすぐに報告を書くようには指示しています。同じことじゃないのかと尋ねました。

「同じだと思うんですけれど、私はすぐに返事をするようにしています。あと、結果が良かったり悪かったり、はっきりしているときにはリモートをつないで顔を出して話すようにもしていますね」

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マネジメントが変わるきっかけになりつつある