4千年で実現 アイスクリーム誕生に至る探求の物語

日経ナショナル ジオグラフィック社

ヨーロッパでアイスクリームが生まれたのは、やはりその頃のイタリアだったと考えられている。17世紀にはフランスにレシピが伝わり、その後英国に広まって、いよいよ大流行となった。「アイスクリーム」という英単語が初めて登場したのは、1670年代のことだ。1671年5月、ウィンザー城における聖ジョージの日の晩餐で、様々な豪華な料理とともに振る舞われたとの記述がある。

みんな大好きアイスクリーム

ソルベと違い、アイスクリームを作るのには大変な労働力を要した。まず手で氷を砕き、岩塩とともに大きな桶に入れる。クリーム、乳、砂糖、風味付けのための材料を入れたポットを、その桶の中に入れ、ポットの中身が固まってアイスクリームとなるまで手で何時間もかき混ぜる必要があった。多くの場合、アイスクリームはその後、果実や花をかたどった型に入れられた。アイスクリームを作り、供するためには莫大な費用がかかったため、ほとんどのヨーロッパ人は手が届かず、主に王族が楽しむものだった。

ソルベットは18世紀にかけてヨーロッパの大都市で人気となっていった。当時育ちつつあった中流階級の人々が、店で冷たいスイーツを購入するようになったのだ。凍らせる過程で氷をなめらかにした「ソルベッティ」のほか、果実と氷を混ぜてザラザラの状態にした「グラニータ」や、氷にミルクを足した「ジェラート」、アイスクリームの前身である「ソルベッティ・コン・クレーマ」などがあった。パリ近郊で王室御用達の陶磁器を製造していたセーヴルなどの工場は、一般の人々もソルベットを楽しむようになると、店舗や家庭に向けてアイスクリーム用のカップアンドソーサーを製造するようになった。

一冊まるごとアイスクリームの作り方について書かれた最初のレシピ本は、1768年にフランスで出版された『L’Art de bien faire les glaces d’office』だ。サブタイトルには「菓子を凍らせるための真理」とある。アイスクリームの流行は間もなく北米の植民地にも広まったが、合衆国の独立後も、18世紀の間は贅沢品だった。ニューヨークの商人が残した記録によると、ジョージ・ワシントン大統領は1790年の夏、アイスクリームに200ドルもかけたそうだ。今日の金額にすると数千ドルにもなる。

アイスクリームがついに大衆にとって手が届くものとなったのは、米国においてだ。1843年、ニューヨークのナンシー・M・ジョンソンが、大幅に時間を短縮できるアイスクリームメーカーを発明し、特許を取得した。国内の企業がこの設計に改良を加え、アイスクリームを簡単に低コストで製造できるようにした。

1843年、米国ニューヨークのナンシー・M・ジョンソンが、初の手回し式アイスクリームメーカーで特許を取得した。およそ45分間取っ手を回し続けると(手でかき回すよりも短時間だった)アイスクリームができる。機械は瞬く間に売れた(ICONOGRAPHIC ARCHIVE/ALAMY)

1851年にはメリーランド州ボルティモアの牛乳屋、ジェイコブ・ファッセルが初のアイスクリーム工場を建設し、アイスクリームが手に入りやすくなると、南北戦争後、アイスクリームの人気は米国中で爆発した。かつては王や女王しか味わうことのできなかったこのスイーツを、米国中の人々がアイスクリームショップやソーダファウンテンで楽しめるようになったのだ。

(文  Alfonso Lopez、訳 桜木敬子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2020年8月2日付の記事を再構成]

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