アバルト595Cピスタ 小気味よくキュートでコンパクト

2020/8/30
ボディーカラーは専用色の「ブルーポディオ」。イタリア語でポディウム=表彰台の名が与えられた、カタログモデルでは選べない鮮やかなブルーだ(写真:荒川正幸、以下同)
ボディーカラーは専用色の「ブルーポディオ」。イタリア語でポディウム=表彰台の名が与えられた、カタログモデルでは選べない鮮やかなブルーだ(写真:荒川正幸、以下同)
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コンパクトでキュートなボディーとホットなエンジンで人気の「アバルト595」シリーズにブルーのボディーカラーも鮮やかな限定車が登場。果たしてその実力はサーキットを表す「ピスタ」の名に恥じないものなのか。オープントップモデルで検証した。

異例のヒット

「ビートルズっていいっすよね!」

親子ほども世代が違う若者から真っすぐ熱い言葉を投げかけられると戸惑う。いやいや、俺だって同時代じゃないから、小学校に入ったころにはもう解散しているから、という言葉を飲み込んで、ついでに「だろっ!? にしても今ごろかよ」という偉そうな顔にならないように気を付けて、さらには、もしかすると武道館公演を見に行ったと思ってそんな話を切り出したとすれば、俺ってそんな年に見えるのか? などという疑問もおくびに出さず、「へー、ビートルズなんて知ってるんだ? いいよねー」と当たり障りのない返答をする。どうせ、どこかで一曲二曲ぐらい聞き知ったに違いない。先に知っていたからといって偉いわけではもちろんないが、あまり深く突っ込んでウザイじじいと引かれてもいいことはない。こう見えてじいさんたちも案外気を遣っているのである。

らちもない話でいきなり脱線したが、こういうことがあるとベストセラーとロングセラーの関係を考えさせられる。皆が知っている昭和の名曲のような圧倒的な大ヒットはクルマでもなかなかお目にかかれない時代だが、ライブや配信から少しずつ広まって、時間がたっても色あせず世代を超えたスタンダードになることもある。そんな珍しくも典型的な例が「フィアット500」およびアバルト595シリーズだ。じわじわ着実に台数を伸ばして、日本導入からもう12年にもなるという今、一番売れているという。

フロントにはイエロー仕上げのリップスポイラーが備わる
4本出しの高性能エキゾーストシステム「レコードモンツァ」を搭載。刺激的なサウンドとともに中回転域でのドライバビリティー向上をもたらす

ずっと右肩上がり

2020年初めにFCAジャパンが発表したところによれば、2019年のフィアット500およびアバルト595シリーズの販売台数は合わせて6970台。発売初年度の2008年は約2500台だったから約10年で3倍近い伸びである。デビュー直後に売れてまた盛り返す再ブレークとも違ってずっと右肩上がりだ。アバルトだけで言えば2955台、2009年は約500台だったからこれも驚くほどの繁殖ぶりだ。さらに特筆すべきは女性比率とマニュアル比率の高さである。フィアットブランドでは女性ユーザー比率が6割超、アバルト車ではほぼ半数がマニュアル仕様だという。日本市場全体では今やMT比率はわずか1%程度のはずだから、これは驚異的と言ってもいい。

ジープブランド(1万3360台)が好調なおかげもあって、FCAジャパンの昨年の販売台数は2万4666台と過去最高を記録したという。いやちょっと待てよ、この3ブランドのセールスが好調なことは分かったが、ということはもう一本の柱であるアルファ・ロメオが少ないことになる。「ジュリア」と「ステルヴィオ」という比較的新しいモデルがありながら不振が目立つ。500/595ほど分かりやすくないということかもしれない。

それに加えてフィアットとアバルトは特別仕様車や限定コラボレーションモデルを継続的に、それこそ多い時には毎月発売するぐらいの勢いで投入し、下火にならないように空気を吹き込んでいる。率直に言ってしまえば、スタンダードモデルとの違いはボディーカラーやインテリアトリムが主なものなのだが、その手法はさすがの小粋さで根強い人気を維持している理由のひとつだろう。絶対数は限られるものの、動かない在庫を新古車にして値引き販売することに比べれば、実に健全な商売である。

ソフトトップのカラーリングはブラック。オープントップモデル「595Cピスタ」の販売台数は5段MT仕様(試乗車)が61台で、ロボタイズド5段MT仕様が33台
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