テレワークで360度評価 上司の能力もわかりやすくダイバーシティ進化論(出口治明)

テレワークでは上司の好みを消し、成果によって妥当な評価に落ち着く
テレワークでは上司の好みを消し、成果によって妥当な評価に落ち着く

テレワークが広がると、一人ひとりの能力はわかりやすくなる。例えば資料を作ってほしいと上司が部下に依頼する。できあがったら資料が送られてくる。それを共有すれば部下の出来不出来は誰にでも分かる。

かつての典型的な大企業では部長が課長に「資料が欲しいから手分けして作ってくれ」と丸投げする。そうすると優秀な部下数人が手分けして仕上げて課長に渡す。部長は誰が何をやったか分からない。

成果評価は難しいという人もいるが、みんなが見れば妥当な評価に落ち着くだろう。テレワークでは360度評価が可能になり、上司の好みを消すことができる点も大きい。もちろん、業務によって比較が難しい場合もあるので、ジャンルを分けてその中で評価をすれば問題はないだろう。

上司の能力もわかりやすくなる。今までのように丸投げできないので、上司は最終の状態をイメージし、そこから一人ひとりに業務を振り分ける。仕事の中には雑務もあるが、誰かに押しつければ不満がでる。ポイントゲッターである部下全員に、仕事を上手に振り分ける能力が求められる。

仕事の評価が時間から成果に変わると、能力のある人は短時間で仕事を終え、空いた時間を副業や勉強に充てるようになる。それによってさらに能力が上がる。当然格差は生じるが、年功による格差と成果による格差のどちらがフェアで居心地がいいだろうか。

ある大企業の役員は「部下の抜てきはマージャンをすればわかる」と言った。確かにマージャンをすればその人の性格が分かるので、一面では真実だ。しかしそれではマージャンに付き合える人にしか昇進のチャンスがない。どっちみち格差が出るなら、その根拠は合理的な方が納得感が得やすい。これまで女性にとっては長時間労働がネックだった。時間管理がなくなれば女性の社会的地位は間違いなく上がると思う。

成果主義は長時間労働を引き起こすのではないかと心配する声がある。だがそもそも、これまで上司は部下の健康を管理してきたのか。過労死やメンタルヘルスなど山ほどある。上司は出社しても会議などで席を外し、部下のことなど見てはいない。この際、自分の体は自分で管理した方がいい。ステイホーム期間中に家族や友人と過ごす時間が楽しいと分かったなら、それを犠牲にしてまで仕事中心にはならないだろう。

出口治明
立命館アジア太平洋大学学長。1948年生まれ。72年日本生命に入社、ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを務める。退社後、2008年にライフネット生命を創業し社長に就任。13年から会長。17年6月に退任し、18年1月から現職。『「働き方」の教科書』、『生命保険入門 新版』など著書多数。

[日本経済新聞朝刊2020年8月3日付]

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