焼いた後にたれを付けるスタイルを先導

臭みが残って硬い肉が中心だった60~70年代前半は、焼き肉のたれに漬けておいた肉を焼くことが多かった。しかし、だんだんと「焼いた肉にたれを付けて食べる」という使い方に変わっていった。たれの役割が下ごしらえから食卓調味料へと変わり、求められる味わいやイメージも見直しが迫られていた。

「創業者はこうした時代の変化を見逃しませんでした。『圧倒的な品質で高級感を出し、価格も全く違う帯域で売るような商品を作れ』と号令がかかったのです」

「量から質へ」というコンセプトの大転換だった。高級感とともに、関西人にも受ける甘みと旨味のある味を追求した結果、「フルーツをふんだんに使う手法に至りました」と清水部長は説明する。

使用するフルーツはいろいろと試行錯誤を重ねた。最終的には甘みと酸味のバランスがよいリンゴをメインに据えて、香りがよく、リンゴと違う甘みで味に深みを出せるモモ、酸味を高めつつ甘みを引き立てるウメを中心に配合することにした。創業者の森村国夫は「直接すすれる(飲める)ぐらいのたれじゃないとだめだ」とこだわり、リンゴ主体のフルーツピューレを全体容量の約3分の1を占めるまでに増やしたという。

「リンゴの味は日本人になじみがあり、イメージがよかった。完成品をスーパーなど小売店のバイヤーに披露したときは、リンゴピューレを実際に食べてもらってアピールしたそうです」

公募案に納得せず、社長自らネーミング

エバラ食品の焼き肉たれ商品は一段と選択肢が広がってきた

新しい商品をどのように訴求するか。社内で新商品のネーミングを募った。清水部長は「公募で集まったのは『焼肉のたれ ゴールド』とか『焼肉のたれ デラックス』といった、やはり既存商品のグレードアップを強調するようなものが多かったそうです。しかし、創業者はこれに納得できなかったようです」と当時の様子を説明する。

ちょうどその頃、創業者・森村国夫が着目したのが当時、放送されていたNHK大河ドラマ『黄金の日日』だったという。「『黄金』という言葉の響きには重厚感があり、人気テレビドラマのタイトルに使われているというタイミングのよさもある」とひらめき、自身で「エバラ焼肉のたれ 黄金の味」と名付けたという。

パッケージにもこだわった。ガラス瓶の容器には、香水やブランデーのボトルにみられるようなダイヤモンド風のカッティングを施した。「高級感=見栄えのよさ」を意識したデザインにするとともに、ダイヤモンドカットが耐衝撃性・耐久性に優れている点にも着目した。

次のページ
トップシェア商品をさらに磨き込む
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら