「当社は1990年設立ですが、リーマン・ショック前は顧客の9割は外資系企業でした。それがいまでは顧客の8割が日本の大手製造業となりました。リーマン・ショック後、各社がBtoBマーケティングに取り組んできました。明確な経営戦略のもとで、マーケティング、営業、ものづくり部門が連携して取り組むことができれば、日本は一気にデジタル強国になれるはずです。何か起爆剤さえあれば、十分に世界に追いつける土台はあります。リーマン・ショックよりも今回の方がインパクトは大きいと思います」

――展示会の開催や対面での営業活動が難しい状況が続くなか、企業はDXを推し進める必要があります。

「DXを実現して売り上げに貢献するには、部分最適を全体最適につなぎ直すことが不可欠です。例えば、展示会や営業は対面であろうが非対面であろうが、実はさほど重要ではありません。BtoBマーケティングで、見込み客を獲得するための『リードジェネレーション』というプロセスがあります。その見込み客のデータを集めるチャンネルの一つが展示会なのです。オンラインという代替手段もありますから、開催が難しいとしても大きな問題ではありません」

「むしろ重要なのは社内に蓄積された見込み客のデータです。営業担当者が集めたり、過去の展示会で集めたりしたものなど、大手企業なら優に100万件を超えるでしょう。名寄せしたり、企業などの属性で整理したりしてもおそらくは数十万件。仮に30万件として、これにメール配信してCTR(クリック率)が4%なら1万2000件。スコアリング上位の200件に電話をすれば25%以上の確率で、すなわち50件のアポイントメントが取れるでしょう。毎月1回メール配信するだけで年間600件のアポイントを獲得できる計算です」

「俺の客」問題に要注意

――今回は自社に眠っているデータを見直すきっかにもなりますね。

「同じ展示会に10年間続けて出展している企業も少なくないでしょう。実は直近の来場者リストよりも10年前のリストから案件が出ることも多いのです。日本の展示会に訪れる情報収集係の多くは20歳代半ばの若手です。ということは10年前の来場者はいま30歳代半ばです。つまり課長や課長補佐など、稟議(りんぎ)を起案するメインターゲットになっているはずなのです」

「展示会が開かれないなか、新たな見込み客の情報は他の手段で集めるしかないでしょう。しかし、過去の価値ある情報を眠らせてはいませんか。それに余った資金を投じれば、どれだけ富を生むかわからないですよね」

――そもそもどれだけの企業で名刺情報をきちんと管理できているのか疑問です。

「日本企業の弱点ともいえるのが営業部門の影響力が強いことです。営業部門はデジタル化していない名刺を山のように持っています。なぜかというと自分の大事な顧客だからです。『俺の客』問題と私は呼んでいます。『勝手にメールを送るな』『名刺はコピーさせない』などと言われて、マーケティング担当者が困り果てることが多いようです。しかし、これは完全にガバナンスの問題です。本気でマーケティングを強化しようと思うなら、『全社のデータを統合管理する』と経営トップが号令をかける必要があります」

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