
「みんな、本能で生きてる?」 私自身が本能で生きていない矛盾
――ブレークの陰で秘められた悩みを抱えていたんですね。
「テレビの仕事って、間髪入れずに切れのある面白いコメントを言わないといけないじゃないですか。特別なスキルが必要だから、誰でも出続けられるものではない。それは十分に分かっていましたが、私の気持ちの中で、なぜか芸人として『よし、乗り越えてやるぞ』という強いモチベーションが湧いてこなかった」
「自分のネタに『みんな、本能で生きてる?』というセリフがあります。それを演じているとき、『あなたこそ本能で生きてるの?』と問い詰める自分がいました。私自身が本能で生きていないのに、仕事を通してお金をもらい、生活までしている。それでいいのか? 何度も悩みましたが『このサイクルはぶち壊さないといけない』と決意したんです。それでちょうど事務所の契約が切れる今年3月末に円満退社し、芸名をブルゾンちえみから本名に変え、イタリア留学に行こうと計画しました。コロナの影響で留学は当面、延期することになってしまいましたが……」
留学のきっかけは2年前のイタリア旅行、ピース綾部のNY移住も刺激
――なぜイタリア留学だったんでしょうか。
「いつか海外で暮らしてみたいという夢は持っていました。ブレークした翌年の18年春のある日、『休むなら今しかないよ』と事務所に言われ、慌てて3泊4日で初めてイタリアを旅行したんです。すると不思議なことに、たった1日しかいなかったローマが大好きになってしまい、『またここに来たい。ここで暮らしたい』と思うようになっていた」
「お笑いコンビ、ピースの綾部祐二さんが17年からニューヨークに拠点を移したことにも影響を受けました。うらやましかったし、すごく心に響きました。私、何歳になっても、新しいことに挑戦する生き方には大賛成なんです。特に大人がそうあってほしいと思っているから」
――「挑戦する大人」ですね。
「ええ。今回も事務所を辞めようとしたら、『もっと大人になりなよ』なんてよく言われたんです。そのとき『大人って何?』と首をかしげてしまった。自分が楽しめていない現状に妥協しろっていうことなの? 『それって違うんじゃない? そんな大人だったら、子供は誰も大人になりたくなくなっちゃうよ』って思ったんです。だから今回の決断に自分なりにメチャメチャ納得できています。とりあえず『無敵』の心境ですね。これからどうなるかはまったく分からないけれど、『トコトン挑戦してやろう』という前向きの気持ちでいっぱいです」
――ちなみに「with B」のコージとダイキはどんな反応でしたか。
「こちらが拍子抜けするくらい、淡々としていましたね。引き止められたわけでもないし、責められたわけでもない。以前からあっさりした関係でしたから……。3月に彼らもコンビを解消し、コージはアメフト選手として復帰、ダイキは俳優を目指して再出発しています」
(聞き手は編集委員 小林明)
※次回(8月7日公開予定)は人生観が変わったというイタリア旅行の思い出、留学計画を陰からサポートした大物有名人、独自のファッション感覚の秘密などに迫ります。