直感力こそトップの条件 他人の評価は気にしちゃダメ松井証券 松井道夫顧問(上)

責任とって、道筋つけるのが社長の仕事

――こうして歴史を振り返ってみると、リーダーに必要なものは先見性とブレない姿勢ですか。

「それも大事ですが、トップに最も必要なのはズバリ、直感力だと思います。失敗するトップは、みんなの意見をよく聞き、常識に基づいて、論理的に経営する人です。前例を重視し、教科書の中に答えを探すような経営はダメです。特に今の時代はそうです。今回の新型コロナウイルスの感染拡大は典型ですが、予想できないことが次々、起きます。その対処法の答えはどこにも書いてありません。トップが自分で決めるしかない。頼りになるのは自分の直感です。周りからどう思われているか、評価を気にし始めたら直感力は落ちます。だからトップに向いているのは、他人からどう思われているのか、まったく気にしない人です」

社長を退任して会長につかず、「月給10万円、出社は週1」。スパッと身を引き、審議会や経済団体などの役職もやらないと語る

――松井証券の改革はすべて直感で方針を決めてきたのですか。

「トップになったとき、お客さんは何を求めているのだろうと考えました。よく顧客本位の経営とか、お客様の利益のために努力するとか、言いますが、自分がお客だったら、美辞麗句を並べられるより、支払うコストを下げてもらうのが一番うれしい。だから私は、会社が損をすることは何か、いつも考えるようになりました。会社の損はイコール顧客の利益です。保護預かり手数料の無料化も店頭株の手数料半額も、会社にとっては損ですが、お客さんにはプラスです」

「社長時代を振り返ると、あれでよかったのだろうかと悩む場面は多かったです。私は結構、優柔不断なところがあって、いったん決めても、よく1人であれこれ考えました。でもね、いくら悩んでも、いくら考えても、キリがないんです。自分1人で決めれば、責任を取るのも自分1人だと、なんとか最後は腹をくくる。その繰り返しでした。トップの仕事は道筋を付けること。日々の収益向上やコスト削減などは、副社長以下に任せておけばいいんです」

(下)「運と哲学」トップに必要 雇ってやる、は通用しない >>

松井道夫
1953年長野県出身。76年一橋大学経済学部卒、日本郵船入社。87年娘婿として松井証券入社。90年常務、95年に社長。2001年東証1部に直接上場。今年6月の株主総会で25年間務めた社長を退任。

(編集委員 鈴木亮)

マネジメント層に必要な4つのスキルを鍛える講座/日経ビジネススクール

会社役員・経営幹部の方を対象とした、企業価値を高める経営の実務に役立つビジネス講座を厳選

>> 講座一覧はこちら

今こそ始める学び特集
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
注目記事
今こそ始める学び特集