理想のスマートシティーは? デジタルで変わる職と住アフターコロナのDX(上) 東京大学大学院准教授 高木聡一郎氏

東京大学大学院准教授 高木聡一郎氏
東京大学大学院准教授 高木聡一郎氏

次代を担う「旗手」は何を感じ、何を考えているのか――。日本経済新聞社が運営する投稿プラットフォーム「COMEMO」から、「キーオピニオンリーダー」が執筆したビジネスパーソンにも役立つ記事を紹介します。今回から、東京大学大学院情報学環准教授で国際大学GLOCOM主幹研究員でもある高木聡一郎さんに、これからのデジタルトランスフォーメーション(DX)について語ってもらいます。

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「DX」という言葉を耳にしたことがあると思います。一般的にはデジタル技術を用いたビジネスの抜本的な変革を意味する用語ですが、その方向性や内容は必ずしも明確ではありませんでした。キャッシュレス、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)連携からレガシー刷新まで、ありとあらゆるものがDXの名のもとに語られることがあり、「一体何がDXなのか? 」「これまでのデジタル化と何が違うのか? 」という疑問をもった人も多いでしょう。また、DXは組織の変革、ビジネススコープの再定義が重要という指摘もあります。いずれもその通りですが、「どういう方向で変革を検討すればよいか」を考えるための手がかりは少なかったのです。

私も同じような疑問を抱えていたので、何かDXの本質を描き出せるような概念を明らかにしたいと考え、過去数年間の世界各地のIT(情報技術)イノベーションの状況をつぶさに観察し、経済学の視点から一つの概念・フレームワークにまとめました。それが「デフレーミング」です。

DXの本質がわかる「デフレーミング」とは何か

デフレーミングとは、フレーム(枠組み)が無くなるという意味の造語です。その定義を簡潔に示すと、「伝統的なサービスや組織の『枠組み』を超えて、内部要素を組み合わせたり、カスタマイズしたりすることで、ユーザーのニーズに応えるサービスを提供すること」です。デフレーミングには3つの要素がありますので、それらを簡単に見ていきましょう。

第1が「分解と組み換え」で、従来の業界や事業の枠組みを超えて、その内部要素を分解し、柔軟に組み合わせ直すことです。これは企業にとっては事業ドメインの見直しを意味するもので、例えば送金とメッセージングを融合したアプリなどが挙げられます。

第2の要素は「個別最適化」です。これは画一的なものを大量に生産して販売するのではなく、ユーザーによって細かくカスタマイズしながら届けることです。例えば、様々なウェブサイトで導入されているパーソナライゼーションの機能が挙げられます。

そして第3の要素が「個人化」です。これは企業に所属し、専属的に働くだけでなく、フリーランスやクラウドソーシングなど、個人として働く場面が増えてきていることを指します。個人事業主として働くだけでなく、これからは兼業・副業など組織に所属しながらも、補完的に個人のスキルや意欲を発揮する場面も増えてくるでしょう。

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